国際政治を見る視点~外交の現実と理想
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
国際秩序が動揺すると、理想主義より現実主義が強くなる
第2話へ進む
外交の現場には、誰もが納得できる「正解」はほとんどない
国際政治を見る視点~外交の現実と理想(1)外交官と学者
小原雅博(東京大学名誉教授)
 国際政治を見る視点のあり方が問われている。かつて「外交実務者」として外交の現場に身を置いた小原雅博氏は今、国際外交を研究・指導する「学者」としてジレンマを抱えているという。それはどんなことなのか。また、情報化が進展化した現代において、国内世論はどれほどの影響力を持つようになったのか。(全6話中第1話)
時間:13分30秒
収録日:2019年7月25日
追加日:2020年1月24日
カテゴリー:
≪全文≫

●外交実務者と学者の決定的な違いは二つある


 みなさん、こんにちは。今回は「国際政治を見る視点」についてのシリーズです。いろいろな視点があると思いますが、今日はそれほど堅くない視点から、いくつかお話をしていきたいと思います。

 私はかつて外交に携わる実務者でしたが、今は外交を研究して教える学者になっています。この「外交実務者」と「学者」の両者の違いは何だろうかということを、私は新しい職場に来て、日々考えているわけです。

 実務者は、自分自身の思想や感情、そして外交に携わる人々との人間関係の影響を受けます。また、情報が全て手元にあるわけではなく、限られた情報のなかで、判断や決定をしないといけません。また、時間も限られています。限られた時間のなかで判断し、決定を下さないといけない面もあります。情報は不完全、時間は不寛容ななかで、選択をし、決断をしているわけです。

 これに対して学者は、そうした影響や制約がなく、あるいはできる限り排除した状況で、ひたすら真理を追究します。例えば、過去に起きた歴史的な事件を研究する場合には、それにまつわるさまざまな情報を時間が許す限り徹底的に集めて研究することができます。これが、実務者と学者の大きな違いではないかと思います。


●「正解」のない外交の現場、情報共有の困難さ


 実際、学者になってみて感じたのですが、学生たちは正解を求めます。質問でも「先生、答えは何ですか」と言いますが、答えのある国際問題はそう多くありません。同僚の先生方のなかでも、たいへん歯切れのよい分析をされる方がいて、私は正直なところ戸惑ったり面喰らったりしてしまうこともあります。

 国際問題や外交の現場では、誰もが納得して「そうだ」と賛成できるような「正解」というのは、ほとんどないのではないかと私は思います。そこには、国内政治と対外交渉の結果としての、極めて冷血で冷厳な事実しか存在しないのではないかと思うのです。そこに至るまでには、外交上の取引や力を背景にした威嚇、あるいは譲歩があります。よく「アメとムチ」といわれるようにインセンティブが与えられたり、いろいろなことが介在して結果が出てくるわけですが、それらの因果関係は必ずしも明らかではありません。

 例えば、ポーツマス講和会議(1905年)では、日本が譲歩してロシアからの賠償金を得ずに済ませたわけ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
米国派経済学の礎…ハミルトンとクレイ(1)ハミルトンの経済プログラム
フェデラリスト・ハミルトンの経済プログラム「4つの柱」
東秀敏
地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
小原雅博
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
トランプ政権の極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
資産運用の思考法…経済や市場の動きをどう読むか
市場予測のポイント…短期・中期・長期の視点と歴史的洞察
養田功一郎
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(12)自転車の青切符と「法と自粛」
【10minで考える】自転車の青切符と「法と自粛」
テンミニッツ・アカデミー編集部
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(5)ゴールドや暗号通貨への評価
ゴールドやビットコインへの評価は?…現代社会の写し鏡
養田功一郎
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
『「甘え」の構造』への誤解…甘えはダメなものなのか?
與那覇潤
新撰組と幕末日本の「真実」(序)『ちるらん 新撰組鎮魂歌』の魅力と史実の絶妙さ
新撰組と『ちるらん 新撰組鎮魂歌』…群像劇としての魅力の源泉に迫る!
堀口茉純
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄