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首脳会談の「握手」映像から分かる日中関係の変化

国際政治を見る視点(5)映像の力と人間の感情

小原雅博
東京大学大学院 法学政治学研究科 教授
情報・テキスト
外交に大きな影響を与える要素として、人間の感情を忘れてはならない。今回は人々の感情に大きく訴えかけることで国際政治を動かし、あるいは歴史を変えたかもしれない写真をいくつか紹介。さらに、日中首脳会談における握手の変遷の様子から見て取れる両国の関係について解説いただく。(全6話中第5話)
時間:04:37
収録日:2019/07/25
追加日:2020/02/21
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≪全文≫

●世界に衝撃を与え、政治を動かした写真


 皆さん、こんにちは。今回は、「映像の力と人間の感情」について話してみたいと思います。

 これは悲観論や楽観論の議論とも関係しますが、外交に大きく影響する要素の一つに、人間の感情の問題があります。私は、これは忘れてはならない要素だと思います。

 冷戦後に世界に広がった、将来に対する明るい希望は、9.11同時多発テロ後の世界の混沌のなかで恐怖に取って代わられました。グローバル化と情報革命は、ヒト・モノ・カネ・情報とともに、感情も国境を越えて飛び交い、国際情勢を左右しています。言葉や映像がリアルタイムで世界に拡散し、一般大衆の感情形成にインパクトを与え、それが政策決定につながることも少なくありません。

 9.11のテロ攻撃で航空機が激突し炎上し倒壊する映像は皆さんもご覧になったと思います。この映像がアメリカの国民や世界の人々に与えた衝撃は、空前絶後の大きさでした。「安全」の概念が崩壊し、超大国は感情に支配されたのです。

 そして、圧倒的多数のアメリカ国民がテロリストへの懲罰という戦争を強く支持したわけです。


●日中首脳「握手」の変遷に見る両国関係


 次に、日中首脳会談の握手の光景を見てみましょう。

 一枚目は、2014年11月10日のAPEC(北京)の際の首脳会談です。2012年9月の尖閣諸島の「国有化」や2013年12月の安倍晋三首相の靖国神社参拝があって、安倍首相就任(2012年12月)後、初めての日中首脳会談となりました。この日の会談では、習近平主席は安倍首相の差し出した手を握ってはいますが、終始硬い表情です。中国政府は、会談後のホームページで「日本側の要請によって実現した」と発表しました。

 二枚目は、2017年11月11日のAPEC(ベトナム)の際の会談です。習近平主席は安倍首相を見つめ、笑みを浮かべています。その直前の党大会で「習一強」体制を固めた余裕すら感じさせます。日本メディアは日中関係改善が期待されると報じました。

 最後の写真は、2019年6月27日のG20(大阪)での首脳会談です。両人の表情は和らいだもので、積極的・友好的な雰囲気を醸し出しています。米中貿易戦争が激化し、中国経済を含めた世界経済が不確実性を増すなかで、日中両国は協力を強化する必要に迫られているのです。

 一党支配の中国においても高まる民意は無視できません。映像が国民に与える印象は権力者も気にするところでしょう。権力者だからこそ、民主主義国家の指導者以上に、民意を気にする必要があるのだと思います。握手にも、その時々の国家関係や国際情勢が反映されるので、それがまさにこうした写真の示しているところです。
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