●世界に衝撃を与え、政治を動かした写真
皆さん、こんにちは。今回は、「映像の力と人間の感情」について話してみたいと思います。
これは悲観論や楽観論の議論とも関係しますが、外交に大きく影響する要素の一つに、人間の感情の問題があります。私は、これは忘れてはならない要素だと思います。
冷戦後に世界に広がった、将来に対する明るい希望は、9.11同時多発テロ後の世界の混沌のなかで恐怖に取って代わられました。グローバル化と情報革命は、ヒト・モノ・カネ・情報とともに、感情も国境を越えて飛び交い、国際情勢を左右しています。言葉や映像がリアルタイムで世界に拡散し、一般大衆の感情形成にインパクトを与え、それが政策決定につながることも少なくありません。
9.11のテロ攻撃で航空機が激突し炎上し倒壊する映像は皆さんもご覧になったと思います。この映像がアメリカの国民や世界の人々に与えた衝撃は、空前絶後の大きさでした。「安全」の概念が崩壊し、超大国は感情に支配されたのです。
そして、圧倒的多数のアメリカ国民がテロリストへの懲罰という戦争を強く支持したわけです。
●日中首脳「握手」の変遷に見る両国関係
次に、日中首脳会談の握手の光景を見てみましょう。
一枚目は、2014年11月10日のAPEC(北京)の際の首脳会談です。2012年9月の尖閣諸島の「国有化」や2013年12月の安倍晋三首相の靖国神社参拝があって、安倍首相就任(2012年12月)後、初めての日中首脳会談となりました。この日の会談では、習近平主席は安倍首相の差し出した手を握ってはいますが、終始硬い表情です。中国政府は、会談後のホームページで「日本側の要請によって実現した」と発表しました。
二枚目は、2017年11月11日のAPEC(ベトナム)の際の会談です。習近平主席は安倍首相を見つめ、笑みを浮かべています。その直前の党大会で「習一強」体制を固めた余裕すら感じさせます。日本メディアは日中関係改善が期待されると報じました。
最後の写真は、2019年6月27日のG20(大阪)での首脳会談です。両人の表情は和らいだもので、積極的・友好的な雰囲気を醸し出しています。米中貿易戦争が激化...