テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
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なぜWHOはマスクの効果について意見を変えたのか

対コロナ、危機の意思決定を考える(4)宣言解除のタイミング

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
緊急事態宣言を解除するタイミングは、非常に慎重にならなければならない。解除することで第二波の感染が起こる可能性があるからだ。マスクの効果を再確認しつつ、時期を見定める必要がある。(全5話中第4話)
※司会者:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:08:48
収録日:2020/04/28
追加日:2020/05/13
≪全文≫

●自粛解除のタイミングは非常に難しい


―― 前回のお話の後半部分についてお聞きしたいことがございます。テンミニッツTVの講義でも、片山杜秀先生(慶應義塾大学法学部教授)が日本の法律の問題について指摘されていました。かつては伝染病予防法があり、政府が国民の行動を禁止することができました。しかし、現在の法律体系では行動を禁止することはなかなか難しいとのことです。このこともあり、日本の場合、政府が打ち出せる方針は、要請やお願いベースにとどまってきました。それゆえ、前回おっしゃった「寄り添う」や「一致団結」というキーワードに象徴されるように、国民が一丸となって問題に対応してきた側面が強いかと思います。

 しかしその反面、ここからどうやって抜け出すのかについては、考えが十分に深まっていないのではないでしょうか。現状では誰もが「ステイホーム」を正義のように思って行動を自粛しているという状況が見受けられますので、ステイホームを解除する切り替えが難しくなるように思います。とりわけ、状況が読みづらくなればなるほど、国民の中でも意見が割れていくでしょう。これは国民の自発性に頼っているがゆえに生まれる問題です。こうした問題については、日本の法体系を含め、どのような仕組み作りが必要なのでしょうか。

曽根 法律の問題については、過去の反省が関連していると思います。特にハンセン病患者の方々が被った問題への反省が、厚労省の関係者に根強くあったのだと思います。その他にも、血友病患者が厚生省を訴えたHIV訴訟もありました。このような過去の苦い経験があるので、ある程度慎重であるのは仕方がないことだと思います。

 しかし同時に、これに関する大きな決断を下さなければならない部分も出てくるでしょう。今回の場合、緊急事態宣言をどんな条件であれば解けるのかについての計算方法が問題です。8割の接触削減を行い、新規の感染者数が減りました。しかし今後、減っただけでなく「もう安心だ」と思えるのはどの程度なのでしょうか。緊急事態宣言を解除し、経済活動を再開して、再び満員電車で通勤したり、居酒屋で唾を飛ばしながら議論したりすることが可能になってしまうと、ウイルスがまた蔓延してしまう恐れもあります。海外から来る人によって第二波、第三波が起こることもあり得ます。この読みは、非常に難しいでしょう。


●マスクの効果については専門家でも意見が割れている


曽根 しかし私がおぼろげながら考えているのは、クラスター分析ができるところまで感染者が減れば、緊急事態宣言を解除しても良いのではないかということです。ただし、マスクは当分着用を推奨するべきでしょう。私はテンミニッツTVの講義において、当初マスクは効果があまりないと言っていましたが、途中で意見を変えました。WHOやアメリカのCDCが見解を変える前に、考えを変えました。

 というのも、マスクについての調査研究を読んでみると、マスクは自分の唾を人に飛ばさなくなったり、自分の顔を触らなくなるという防御的な意味合いだけではなく、飛沫のようなブラウン運動をしているウイルスであれば、防げるということが分かったからです。私は当初、微小なウイルス(0.1ミクロン)は100~1000倍大きいマスクの網目も通り抜けてしまうので意味がないのではないかと考えていたのですが、飛沫のような浮遊する微粒子はブラウン運動をしており、それであればマスクの網の目に引っかかるというのです。そのことを知り、マスクは布であってもある程度の効果があると考えました。ウイルスの大きさに対してマスクの網目は非常に粗く大きいので、完全にすり抜けていくと思っていたのですが、どうやらそうではないようです。

 このことは、面白い事例の1つだと思います。エビデンスに基づき、石鹸などで手を洗うことと、アルコールで手を消毒することのウイルスに対する効果は、医者の間で意見が一致していました。証拠もたくさんあり、論文もたくさんあります。ところが、マスクに関しては意見が分かれるのです。ですから、エビデンスベースから考えても、いまだに「ホントはどっちなの?」と疑問を持つ人がいます。

 しかし、WHOやCDCも意見を変えたということを鑑みれば、マスクにはかなりの効果があるのではないかとも考えられます。これも、試行錯誤を続けていく必要があるとは思うのですが、マスクはしないよりもしたほうが良いのでしょう。それにより、最低限自分の飛沫は人に撒き散らすことはありません。人から来るものも、ブラウン運動しているウイルスであれば、ある程度マスクで防ぐ可能性があるということです。ちなみに過去の例を見ると、マスクに関する学術論文を書いて医学誌に投稿しても採択されないのではないでしょうか。ですが、日本の国民の中でも非常に関心があるテーマです。...
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