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アルプスの林業大国での取り組みに学ぶ!

2050年の世界を考える―質疑応答(2)成長産業としての林業

小宮山宏
東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツTV座長
情報・テキスト
 
2014年8月3日開催「プラチナ未来人財育成塾@会津」におけるプラチナ構想ネットワーク会長・小宮山宏氏講演「2050年の世界を考える」を収録。次の世代を担う中学生たちに向けて、小宮山氏が熱く語りかける。(全17話中第15話目)
時間:04:13
収録日:2014/08/03
追加日:2014/10/09
≪全文≫

●大規模化・機械化・情報化で、林業を有望産業に


── 先ほど先生は林業などをポイントとして挙げていましたが、今、日本は少子高齢化で、林業に対する若者の意識も薄れてきています。どのような対策を取っていけばよいでしょうか?

小宮山 そこは僕も一生懸命考えているのです。例えば、農業の場合、昔は100人働いて100人分、つまり100人が農業やって食べていたという話を先ほどしました。やはり林業も同じ理屈で、本格的に効率の高いことをやらなければいけない。それには、一つは大規模化。もう一つは機械化。もう一つは情報化。この三つで、今の人たちと同じような数で、非常に効率のいい、儲かる林業ができるのです。

 ヨーロッパのオーストリア、アルプスのある国ですが、あそこは林業で生きています。効率がいいのです。例えばアメリカのような広大な平野で林業をやっているといっても日本の参考にはなりませんが、アルプスのオーストリアが林業で生きている。これは参考になります。

 そして、ここがまさに大規模化、機械化、情報化なのです。情報化とは例えばどんなことかというと、木にも、細い木、太い木、良い木、悪い木など、いろいろな種類がありますが、オーストリアでは、あまり良い木ではないものをABC、それから、良い木をXYZというように6段階に分けています。そして、この一番いいZの木は、「こういう木がほしい」という注文が出ると、1週間以内に、それを切って届けることができます。これは情報化なのです。どこにそういう木があって、道路がどうなっていて、どのように切って、ということが全部分かっています。いわばヤマト運輸です。ヤマト運輸の荷物管理のようなことを林業でやっているのです。

 これが情報化という意味です。これを大規模化・機械化と組み合わせると、本当にいい林業ができるのです。


●“前向きの林業”ビジョンを示せば、若者は来る


小宮山 僕たちプラチナ構想ネットワークのメンバーに、下川町という北海道の町があります。スキージャンプで有名なところで、高梨沙羅選手などもこの辺りですかね。そこが比較的状況がいいので、今言ったようなことをやろうと思い、一生懸命実験をしています。

 君の最初の質問に戻りますが、そういう前向きの林業をやるということが見えた途端に、若い人がいくらでも希望してきます。ただ、そんなにたくさん雇用できないので、つまり仕事を提供することができないので、そんなにたくさん採用するわけではないけれども、そこには本当に優秀な若い連中がどんどん希望してきます。

 ですから、「今、日が当たっていない」というのは君の言う通りです。けれども、誰が日を当てるのかというと、それは僕たちだと思います。ちゃんとビジョンがあれば、面白いところには若い人が来るはずです。それが、僕たちが狙っていることです。大変いい話ですね。
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