「怒り」の仕組みと感情のコントロール
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怒りを抑える方法としてとても効果的な「再評価」とは
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(3)怒りの抑制方法
哲学と生き方
川合伸幸(名古屋大学大学院情報学研究科教授)
怒りの感情は他の感情とは異なり、他人とのコミュニケーションの中でのみ生じるものである。しかし、怒りを抑えられず暴力を振るうと大きな問題になる。では怒りを抑えるためにはどうすればいいか。効果的なのは、自分の置かれている状況を客観視して思い返すことである。さらに効果的なのは「再評価」という方法だ。再評価とは自分に生じた出来事を別の視点で考え直すことで、「フレーミング効果」と似ているという。(全5話中第3話)
時間:11分58秒
収録日:2020年11月10日
追加日:2021年3月10日
≪全文≫

●基本感情の中で怒りだけは他者がいて初めて生まれる感情


 今回は怒りの抑え方についてお話しします。

 人によって、怒りのツボはさまざまですが、多くの人が共通して怒る状況もあるようです。アメリカの研究者は、次の9つの状況で人は怒りを感じやすいと述べています。

 生命や身体を守るとき。侮辱されたとき。愛する家族を守るとき。自身の居場所を守るとき。友人を守るとき。社会の秩序を守るとき。資源が奪われそうなとき。自分の属する集団を守るとき。自由に移動できないとき。これらの9つが多くの人が怒りを感じる状況です。

 これらの単語の頭文字を並べると、LIFE MORTS(=人生の致命傷)となるので英語圏の人には覚えやすいようです。「生命と身体」、「名誉」、「家族」、「自分が属する社会集団」、「なわばり」、「友人」、「資源」、「社会的正義」が脅かされたときに、ほとんどの人が怒りを感じるのは、そのまま放置しておくと、これらがまさに自分の人生の致命傷(LIFE MORTS)になり得る状況だからです。つまり、怒りとは自分や周りの者が脅威を与えられたときに対抗しようとする反応なのです。

 したがって、怒りは縄張りを守ろうとする本能が起源だと考える説もあります。カッとして我を忘れるという反応には、生命や自分の身の回りの大切なものを守るという適応的な意味があり、多くの動物にも観察されています。このように、怒りは自分や自分の周りのものや人を守るために重要なのですが、実は社会的な存在にしか怒りは向けられません。

 人間の感情はさまざまですが、喜怒哀楽の4つに怖い、気持ち悪い、驚いた、を加えて「基本感情」と呼びます。基本感情と呼ばれるのは、どの国のどの年齢の人も同じようにこのような感情を感じるためです。それに対して、侘び寂びや韓国語の「恨(ハン)」は、文化によって異なる独特なものなので、「派生感情」と呼ばれます。

 基本感情のうち、怒り以外はモノにも向けられます。くじに当たれば嬉しく感じて喜びますし、大事にしていたものが壊れると悲しくなります。道端で目にしたイヌの糞によって不快な気分や嫌悪感を引き起こされ、イヌに吠えられれば怖い思いをします。

 また、突然の雷に驚くこともありますが、物や自然現象に対して怒りを感じることはほとんどありません。でこぼこした道...

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