「怒り」の仕組みと感情のコントロール
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
認知機能を高めるのに必要なのは脳トレではなく有酸素運動
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(5)認知能力の鍛え方
川合伸幸(名古屋大学大学院情報学研究科教授)
近年、「脳トレ」という脳の認知機能向上を目指したトレーニングが話題となっているが、これまでの研究の結果、脳トレが日常の生活に必要な能力の向上に寄与することはほとんどないことが分かっている。むしろ、ウォーキングなどの有酸素運動を通じて、代謝や神経伝達物質の伝達効率を上げたほうが認知機能の維持、改善には効果的で、そうすると抑制能力が高まり、怒りを抑えやすくなる。(全5話中第5話)
時間:11分30秒
収録日:2020年11月10日
追加日:2021年3月24日
≪全文≫

●脳トレの効果は日常生活にはほとんどない


 今回は、認知能力の鍛え方についてお話します。

 最近、「脳トレ」という言葉をよく耳にします。今では辞書に載るほど一般的になりました。脳トレとは、計算や漢字ドリルを通じて、脳の認知機能全体の向上を目的としたトレーニングです。脳トレがここまで市民権を得たのは、「トレーニング」という言葉をうまく用いたからだと思います。

 トレーニングという言葉を聞くと、無意識のうちに身体のトレーニングをイメージするかと思います。身体、特に筋肉は加齢とともに衰えますが、何歳になっても鍛えれば鍛えるほどしなやかで強靭になります。そして、身体を鍛えると筋肉がつくだけでなく、心肺機能も高まり、負荷をかけることで骨も強くなります。トレーニングという言葉を聞くと、脳の働きにも同じような効果が出ることを期待するかと思います。

 トレーニングの効果は鍛えた特定の部位だけでなく、身体全体に及ぶこともあります。同様に、何歳からでも、むしろ高齢者ほど、漢字や計算能力向上のための脳のトレーニングを通じて、特定の認知機能だけではなく、認知能力全体が高まるかのような「錯覚」を覚えるのではないでしょうか。はたして、脳トレに効果はあるのでしょうか。

 最近では脳トレに関する数多くの本やゲームが売られていますが、最初の研究は米国の大規模臨床研究でした。30年以上前の米国では、いわゆるデイサービスにくる人の半数と、居住型の介護施設にいる75パーセント以上の人が65歳以上の高齢者でした。財政的な負担をかかえていた米国は、「認知機能を訓練することで、高齢者が自律的な日常生活を送れるようになるのではないか。そのことによって、財政的な負担を減らせるのではないか」と考え、調査を行いました。

 65歳以上の高齢者2800人が調査の対象となりました。平均年齢は75歳です。まず、これらの人の認知能力と生活能力を調べて、この2つに偏りが出ないように4つのグループに配分しました。これらのグループは、(1)記憶訓練を受けるグループ、(2)推論の訓練を受けるグループ、(3)処理速度の訓練を受けるグループ、(4)何も受けないグループです。

 半年間、それぞれの機能の訓練を受けた結果、訓練された能力は向上しました。つまり、記憶の訓練を受けた人は、記憶力は高い水準で維...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏