「怒り」の仕組みと感情のコントロール
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脳が身体の状態にだまされて怒りが弱まることがある
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(2)怒ったときの脳と体の反応
川合伸幸(名古屋大学大学院情報学研究科教授)
普通の状態では怒ったときの脳と体の状態は一致しているが、意図的に一致させないようにすると、脳が体の状態にだまされることがある。例えば、強く握るのが右手より左手のほうが怒りは弱くなるという。また、怒りには攻撃性の成分と不快感の成分があり、体の状態の変化は前者にのみ作用する。(全5話中第2話)
時間:11分48秒
収録日:2020年11月10日
追加日:2021年3月3日
≪全文≫

●「怒り」を感じたときの脳と体の反応


 今回は、「怒り」の仕組みと体の反応について説明します。

 私たちは、怒ったときに体の変化を感じます。怒った状態を表す「頭に血が上る」という表現があります。辞書によれば、「感情が昂ぶり、冷静さを失う。逆上する。かっとなる」という意味です。また、「怒髪天を衝く」と表現することもあります。どちらも、激しい怒りが頭部に現れることを表現しています。実は、この表現は単なる比喩でなく、実際に怒りを感じたときの身体の状態をうまく言い表しています。

 例えば、怒ったときには、心拍や呼吸が早くなることを自覚できます。そのような変化は自律神経系にはっきりと現れます。平静状態にくらべて心拍数、皮膚の表面温度、皮膚電気抵抗(発汗量)のいずれも上昇します。

 このような自律神経系の活性パターンにはそれぞれ意味があります。簡単にいうと、怒りを感じるということは、他者を攻撃しようとする状態になっていることを意味します。心拍を速めて、身体に多くの血液を送ることで、筋肉の細胞に酸素を与えて、すぐにでも飛びかかれる状態とし、発汗を増やすことで、捕まえた相手を逃がさないようにしているのです。このような身体状態の変化は、怒りの原因になった相手を攻撃できる状態にするためのものです。このような状態の変化は脳の活動にも現れます。

 私たちが人やモノに対して接近したいと感じるときと、逆に遠ざかりたいと感じるときとでは、前頭葉の神経活動が左右非対称になることが知られています。例えば、かわいい赤ちゃんを見る、あるいはおいしそうな食べ物を見ると、それに近づきたいと感じます。このような場合には、左前頭葉の脳波の電位が優勢になります。

 逆に気持ち悪いモノや怖いモノを見ると、そこから遠ざかりたいと感じます。そのような場合には、右の前頭葉の神経活動が優勢になります。悲しい、怖いといった不快な情動では右脳の前頭葉が活性化しますが、これはその状況から逃げ出そうとする気持ちを反映しているのです。

 しかし、同じ不快な感情でも、怒りを感じたときには、好きなモノを見たときと同様に左前頭葉が活性化します。その理由は、腹の立つ相手に接近しようとする気持ちが反映されているためです。つまり、体の状態を反映する自律神経系も、中枢神経系の脳も、怒っているときには相手に接近しようとしてい...

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