「怒り」の仕組みと感情のコントロール
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
脳が身体の状態にだまされて怒りが弱まることがある
「怒り」の仕組みと感情のコントロール(2)怒ったときの脳と体の反応
川合伸幸(名古屋大学大学院情報学研究科教授)
普通の状態では怒ったときの脳と体の状態は一致しているが、意図的に一致させないようにすると、脳が体の状態にだまされることがある。例えば、強く握るのが右手より左手のほうが怒りは弱くなるという。また、怒りには攻撃性の成分と不快感の成分があり、体の状態の変化は前者にのみ作用する。(全5話中第2話)
時間:11分48秒
収録日:2020年11月10日
追加日:2021年3月3日
≪全文≫

●「怒り」を感じたときの脳と体の反応


 今回は、「怒り」の仕組みと体の反応について説明します。

 私たちは、怒ったときに体の変化を感じます。怒った状態を表す「頭に血が上る」という表現があります。辞書によれば、「感情が昂ぶり、冷静さを失う。逆上する。かっとなる」という意味です。また、「怒髪天を衝く」と表現することもあります。どちらも、激しい怒りが頭部に現れることを表現しています。実は、この表現は単なる比喩でなく、実際に怒りを感じたときの身体の状態をうまく言い表しています。

 例えば、怒ったときには、心拍や呼吸が早くなることを自覚できます。そのような変化は自律神経系にはっきりと現れます。平静状態にくらべて心拍数、皮膚の表面温度、皮膚電気抵抗(発汗量)のいずれも上昇します。

 このような自律神経系の活性パターンにはそれぞれ意味があります。簡単にいうと、怒りを感じるということは、他者を攻撃しようとする状態になっていることを意味します。心拍を速めて、身体に多くの血液を送ることで、筋肉の細胞に酸素を与えて、すぐにでも飛びかかれる状態とし、発汗を増やすことで、捕まえた相手を逃がさないようにしているのです。このような身体状態の変化は、怒りの原因になった相手を攻撃できる状態にするためのものです。このような状態の変化は脳の活動にも現れます。

 私たちが人やモノに対して接近したいと感じるときと、逆に遠ざかりたいと感じるときとでは、前頭葉の神経活動が左右非対称になることが知られています。例えば、かわいい赤ちゃんを見る、あるいはおいしそうな食べ物を見ると、それに近づきたいと感じます。このような場合には、左前頭葉の脳波の電位が優勢になります。

 逆に気持ち悪いモノや怖いモノを見ると、そこから遠ざかりたいと感じます。そのような場合には、右の前頭葉の神経活動が優勢になります。悲しい、怖いといった不快な情動では右脳の前頭葉が活性化しますが、これはその状況から逃げ出そうとする気持ちを反映しているのです。

 しかし、同じ不快な感情でも、怒りを感じたときには、好きなモノを見たときと同様に左前頭葉が活性化します。その理由は、腹の立つ相手に接近しようとする気持ちが反映されているためです。つまり、体の状態を反映する自律神経系も、中枢神経系の脳も、怒っているときには相手に接近しようとしてい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らない自由主義の歴史~後編(1)ニューリベラリズムへの異議
ハーバート・スペンサーとダイシー…20世紀の危機の予言者
柿埜真吾
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考
出口治明
徳川家康と貞観政要(1)徳川家康が太宗から学んだ治世の要諦
『貞観政要』とはいかなる書か?家康は何を学んだのか?
田口佳史
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か(1)AIに置き換わる仕事と人間がやる仕事
AI時代にリベラルアーツがなぜ必要か…人間がやるべきこととは?
橋爪大三郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
『「甘え」の構造』への誤解…甘えはダメなものなのか?
與那覇潤

人気の講義ランキングTOP10
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
クラシック音楽の歴史をピアノ演奏で辿る~ヴィヴァルディ四季
野本由紀夫
テロメアから考える「アンチエイジング」(1)老化とテロメアの関係
テロメアの長さが「がんリスク」と「老化」のカギを握る
堀江重郎
「満洲」から考える日本とアジア(4)蒙古襲来と清朝建国
実は元寇はモンゴル人ではなかった?満洲をめぐる民族興亡史と「漢族」との関係…蒙古襲来から清朝建国まで
宮脇淳子
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
クラシック音楽で世界史がわかる…宗教音楽からクラシックへ
片山杜秀
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(2)教義の宗教と覚りの宗教
キリスト教は教義の宗教、仏教は覚りの宗教…仏教はなぜ普遍宗教か
橋爪大三郎
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
音楽の父バッハ…なぜ「音楽」が西洋でリベラルアーツなのか?
樋口隆一
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子