●滅びの始まりは数量化
―― ヨーロッパはやはりヒューマニズム全盛時代で移民を許し、一方で経済的には賃金の安い労働者を使いたかった。両サイドが相まって、にっちもさっちも行かなくなってしまった。
執行 ちょっとした幸福をヨーロッパ人も捨てられなかったのです。
―― そうでしょうね。楽して、いい目にあいたい。最初のうちはそれで良かったけれど、移民も2代目になったら、もうフランス人です。「初代の親は移民とされても、なんで肌の色が違うと、俺たち、こんな目に遭うんだ」となって暴れ始めますよね。それが3代目ぐらいになったら、もうどうしようもないです。
執行 もう止められない。
―― おそらく、その大型版がアメリカです。アフリカから奴隷を連れてきて、プランテーションをやってしまって、その「原罪」が今あちこちに出てきている。
執行 自業自得です、あれは。
―― そして日本の場合は戦後75年間、「エリートをつくらない」と決めた仕組みでやってきたので……。
執行 日本もそうですが、世界中です。20世紀に入ってから、エリートをつくらない。ヨーロッパもアメリカも教育制度をよく見ると、エリートを出さないようにしています。すべての国が「ヒューマニズム」の名のもとに。エリートを出すシステムが「差別」ということですから。
―― そこもヒューマニズムなんですね。
執行 昆虫学の研究でもわかりますが、昆虫もエリートがいなくなったときが、その昆虫の種が滅びるときなのです。昆虫というのは必ず何%か、一定数の遺伝的なエリートがいます。アリでも、ハチでも。その保持が、その種の保存になるのです。そのために兵隊アリがたくさんいて、みんなエリートを守るために討ち死にする。
このエリートの頂点にいるのが、女王バチです。女王バチが王様だとすれば、その下に貴族がいる。それをやるシステムが、種なのです。
人間の場合も、エリートの抽出です。私は読書家なので、世界中の古典を調べました。『ヴェーダ』や『ウパニシャッド』『旧約聖書』、ほかにもいろいろなサーガや日本の神話も含めて、世界中の古典や神話を昔から調べてきて、わかったのは昔の人類ができたときの文明というのは「エリート製造システム」なのです。エリート製造システムが、社会思想ということです。
『ウパニシャッド』をひと言で言うなら、どうやってエリートをつ...