脱人間論
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トインビーが述べた、民族が滅びる「3つの条件」とは?
脱人間論(11)理想、歴史、数量化
考察と随想
20世紀以降、「ヒューマニズム」の名のもと、世界中でエリート教育をしなくなった。だが昆虫ですら、エリートがいなくなれば、その種は滅びる。人類が築き上げてきた諸文明にも、エリート製造システムが機能していた。歴史家のトインビーは国が滅びる3つの要因として、民族が「理想を失ったとき」「歴史を失ったとき」「物事を数量で見るようになったとき」を挙げている。中でも大事な理想とは人間で言えば「初心」である。初心を忘れなければ学校であれ結婚であれ、充実したものになる。「魂」も大事だ。現代では「魂」を持ちつづけると落ちこぼれる可能性もあるが、しかし、それでも捨てないでほしい。「魂」を捨てなければ、最終的に価値のあるいい人生を送れる。(全11話中第11話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:10分53秒
収録日:2021年3月18日
追加日:2021年7月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●滅びの始まりは数量化


―― ヨーロッパはやはりヒューマニズム全盛時代で移民を許し、一方で経済的には賃金の安い労働者を使いたかった。両サイドが相まって、にっちもさっちも行かなくなってしまった。

執行 ちょっとした幸福をヨーロッパ人も捨てられなかったのです。

―― そうでしょうね。楽して、いい目にあいたい。最初のうちはそれで良かったけれど、移民も2代目になったら、もうフランス人です。「初代の親は移民とされても、なんで肌の色が違うと、俺たち、こんな目に遭うんだ」となって暴れ始めますよね。それが3代目ぐらいになったら、もうどうしようもないです。

執行 もう止められない。

―― おそらく、その大型版がアメリカです。アフリカから奴隷を連れてきて、プランテーションをやってしまって、その「原罪」が今あちこちに出てきている。

執行 自業自得です、あれは。

―― そして日本の場合は戦後75年間、「エリートをつくらない」と決めた仕組みでやってきたので……。

執行 日本もそうですが、世界中です。20世紀に入ってから、エリートをつくらない。ヨーロッパもアメリカも教育制度をよく見ると、エリートを出さないようにしています。すべての国が「ヒューマニズム」の名のもとに。エリートを出すシステムが「差別」ということですから。

―― そこもヒューマニズムなんですね。

執行 昆虫学の研究でもわかりますが、昆虫もエリートがいなくなったときが、その昆虫の種が滅びるときなのです。昆虫というのは必ず何%か、一定数の遺伝的なエリートがいます。アリでも、ハチでも。その保持が、その種の保存になるのです。そのために兵隊アリがたくさんいて、みんなエリートを守るために討ち死にする。

 このエリートの頂点にいるのが、女王バチです。女王バチが王様だとすれば、その下に貴族がいる。それをやるシステムが、種なのです。

 人間の場合も、エリートの抽出です。私は読書家なので、世界中の古典を調べました。『ヴェーダ』や『ウパニシャッド』『旧約聖書』、ほかにもいろいろなサーガや日本の神話も含めて、世界中の古典や神話を昔から調べてきて、わかったのは昔の人類ができたときの文明というのは「エリート製造システム」なのです。エリート製造システムが、社会思想ということです。

『ウパニシャッド』をひと言で言うなら、どうやってエリートをつ...