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おいしい餌をまく悪魔は、必ず美男美女の姿でやってくる

脱人間論(7)なぜ成功や幸福を捨てねばならないのか

概要・テキスト
三崎船舶時代に出会った悪漢政との出会いは、人生最大の幸運だった。日本一の船頭で、強烈な魂を持っていた。学歴はないが頭が抜群に切れ、膨大な取引データもすべて記憶していたほど。こういう人が50年前までの日本にはいて、日本を支えていた。だから当時はまだ希望を持てたが、今、悪漢政のような魂を持つ日本人はいない。魂を失うのは、悪魔が撒く「幸福」「成功」「社会保障」といった、おいしい餌に釣られるから。魂を賦活させるには、みんなが喜んだり、楽しいと思うものを捨てる必要があるのだ。(全11話中第7話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:11:44
収録日:2021/03/18
追加日:2021/06/04
カテゴリー:
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≪全文≫

●「悪漢政」のような傑物がいなくなった


―― 先生は、「悪漢政」と付き合っていたぐらいですからね。

執行 もう親友ですよ。

―― あれは、すごい話です。

執行 人生最大の幸運の一つです。明治の、無法松みたいな人間と直に接することができたわけですから。三崎船舶の営業に入ったおかげで、できたことです。なぜ三崎船舶に入ったかというと、それまでいた大正海上を辞めたのです。

―― 三井系の。

執行 今の三井住友海上です。昔、大正海上と呼ばれていた。あの当時はまだ、会社を辞めるような奴は勘当されますから、僕は親父から家をおっぽり出されました。「おまえなんか、男じゃない」と。

―― 終身雇用制、全盛時代ですからね。

執行 「執行家の名折れ」ということで、本当に裸一貫で家を追い出されました。

―― 大正海上といえば、江戸時代でいえば「雄藩」ですから。

執行 「おまえ、精神鑑定を受けてこい」と言われ、「受けない」と言ったら「家を出ていけ」と。それで家を出されて、食えなくなってしまった。すると、(神奈川県の)三崎にあった中小企業で、三崎船舶というマグロ漁船や自衛隊の船を造っている会社に知り合いがいて、そこがドックハウスという揚げた船の船員を泊める宿舎を持っていた。そこにタダで住まわせてやると言うから、それで三崎船舶に入ったのです。給料だけでは、食えませんから。

―― なるほど、宿ができたと。

執行 給料は安かったけれど、生活がタダなのがありがたかった。城山荘という宿舎に入り、そこで生活をする中、今言ったパプアニューギニアの船員たちとも、みんな友だちになりました。あの当時、もう漁船員というとインドネシアかパプアニューギニアでした。

―― なるほど。

執行 まあ、あのころは楽しかった。いい思いもしました。僕がこういう性格で、喧嘩も強いから、みんなから尊敬されました。みんなが貢物を持ってくるのです。

―― 喧嘩が強いのは大事ですよね、そういう世界で。

執行 それはそうです。もう腕力だけですから。そして僕は腕力は誰にも負けなかったので、みんな宮本武蔵に会うみたいな感じで尊敬してくれました。

―― そこに悪漢政みたいな人もいた。

執行 悪漢政はマグロ漁船の親玉で、日本一の船頭でした。奥津水産という会社の社長で、その人と直に知り合いになって、僕は好かれた。これがまた楽し...
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