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キリストは神の言葉の厳しさを前提に「赦し」を説いた

脱人間論(5)愛のために、自分の体をなげうつのが人類

概要・テキスト
肉体よりも魂を重んじる人は、現代では落ちこぼれになってしまう。だが、魂のために肉体をいかに犠牲にするかを考えてきたのが、人間である。その代表が武士道や騎士道だといえよう。武士道や騎士道のみならず、魂のために肉体を犠牲にすることを尊ぶのが、世界中の人類に共通する思想だったのだ。家庭の秩序を守る父親も重要で、厳格な父親がいるから母親の赦しも生きてくる。キリスト教も、厳しい「神の言葉」があって初めて、「赦しも必要」というイエスの言葉が生きてくるのである。だが、その「当たり前」のことが否定され、弱者がむしろ貴族化しているのが現代である。(全11話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:11:28
収録日:2021/03/18
追加日:2021/05/21
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≪全文≫

●現代では、「魂」の人は「落ちこぼれ」


―― 先生は「肉体よりも大切なものがある」というお話しをされて、ずっと魂について書かれています。

執行 そう、「魂」が人間ですから。

―― 『脱人間論』(講談社)にしても、その前の『現代の考察』(PHP研究所)にしても、先生の本の根深い読者はすごいものですね。

執行 「魂」派です。これは少数いるのです。ただ魂がわかる人は、みんな落ちこぼれです。私のファンは、落ちこぼれが本当に多い。でも現代は、落ちこぼれでいいと思っています。だいたい、物質文明と消費文明の今の社会の中で、いい思いをしている人、偉くなった人、栄耀栄華を極めている人は、物質文明を利用している人間に決まっています。魂があれば、今の文明を受け入れられないものがあります。だから魂派は、みんなダメです。

 一例を挙げると、原発問題です。私は20代のころから、原子力の問題についてはわかっていました。だからあの福島第一原発をつくるときも大反対で、反原発の社会運動をしていました。

―― 1970年のときに、すでにやっていたんですね。

執行 今はもう無理だからやっていませんが、「まだまだ戻れる」と思っているころでしたから。京都大学の有名な先生も何人もいて、だいたい核物理学の学者です。私が20代のころ優秀だった人たちは、全部、原発反対者でした。

 それから50年経って誰一人、例外なく教授になれませんでした。ものすごく優秀な人たちが全員、助教授止まり。東大も、京大の出身者もです。

―― わかりやすいですね。

執行 名前も挙げられます。原発はいい悪いではなく、ダメなのです。人類の力で捨てることもできないし、もとに戻せません。それを、どんどんつくっていくのですから。

―― 確かにおっしゃるとおりで、暴走が始まってしまったら、止められないわけですね。

執行 もう止まりません。

―― そして、(使用済み核燃料が)1回組成されたら、今度は捨てる場所もない。

執行 もちろん、ありません。もう、今でもありません。20年前の段階で私がダメだと言っていたのは、原発だけを取り上げても、あの「3.11」の前の段階で世界中が原発をやめても、もう人類は滅びるのです。あの原発を抱えたまま、あれを廃炉できないまま。そういう社会を今、どんどんつくっている、ということです。

 しかも公害物質は原子力だけでな...
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