●現代では、「魂」の人は「落ちこぼれ」
―― 先生は「肉体よりも大切なものがある」というお話しをされて、ずっと魂について書かれています。
執行 そう、「魂」が人間ですから。
―― 『脱人間論』(講談社)にしても、その前の『現代の考察』(PHP研究所)にしても、先生の本の根深い読者はすごいものですね。
執行 「魂」派です。これは少数いるのです。ただ魂がわかる人は、みんな落ちこぼれです。私のファンは、落ちこぼれが本当に多い。でも現代は、落ちこぼれでいいと思っています。だいたい、物質文明と消費文明の今の社会の中で、いい思いをしている人、偉くなった人、栄耀栄華を極めている人は、物質文明を利用している人間に決まっています。魂があれば、今の文明を受け入れられないものがあります。だから魂派は、みんなダメです。
一例を挙げると、原発問題です。私は20代のころから、原子力の問題についてはわかっていました。だからあの福島第一原発をつくるときも大反対で、反原発の社会運動をしていました。
―― 1970年のときに、すでにやっていたんですね。
執行 今はもう無理だからやっていませんが、「まだまだ戻れる」と思っているころでしたから。京都大学の有名な先生も何人もいて、だいたい核物理学の学者です。私が20代のころ優秀だった人たちは、全部、原発反対者でした。
それから50年経って誰一人、例外なく教授になれませんでした。ものすごく優秀な人たちが全員、助教授止まり。東大も、京大の出身者もです。
―― わかりやすいですね。
執行 名前も挙げられます。原発はいい悪いではなく、ダメなのです。人類の力で捨てることもできないし、もとに戻せません。それを、どんどんつくっていくのですから。
―― 確かにおっしゃるとおりで、暴走が始まってしまったら、止められないわけですね。
執行 もう止まりません。
―― そして、(使用済み核燃料が)1回組成されたら、今度は捨てる場所もない。
執行 もちろん、ありません。もう、今でもありません。20年前の段階で私がダメだと言っていたのは、原発だけを取り上げても、あの「3.11」の前の段階で世界中が原発をやめても、もう人類は滅びるのです。あの原発を抱えたまま、あれを廃炉できないまま。そういう社会を今、どんどんつくっている、ということです。
しかも公害物質は原子力だけでな...