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「いいね」の数を誇る風潮こそ、物質文明的な虚無思想

「葉隠武士道」を生きる(8)すべて「数」で判断する愚

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
昔は、真っ正面から真剣に文学論を闘わせるような気風もあったが、最近では、「争いがいけない」「嫌われたくない」ということばかり優先するようになり、友達の数やSNSの「いいね」の数を誇るようになってしまった。しかし、そもそも「人から好かれよう」と思うのは卑しい考えで、「友達の数が多いほどいい」という考えは物質主義の行きついた虚無思想の代表なのである。今はすべてが数で判断され、ベストセラーがよい本とされるが、昔は売れる本はむしろバカにされた。求めるべきは数ではなく質なのに、数でものを見るグローバリズムという消費文明が世界を覆ってしまったのだ。思えば一昔前は、食べ物をじっと見ただけで「卑しい」と叱られるような社会だった。(全12話中第8話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:19
収録日:2021/04/08
追加日:2021/08/27
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≪全文≫

●「争いがいけない」「嫌われたくない」でダメになった現代社会


―― 先生は若い頃にいろいろ、いわゆる文学青年同士の付き合いがありました。

執行 たくさんありました。

―― そういう話の中で魂と魂をぶつけ合うような議論というか、討論会みたいなものもあったと思います。それはもう全力で、それぞれがぶつけ合うということでしょうか?

執行 これはもう全力で、喧嘩してでも意見をぶつけ合うしかない。それ以外は文学論ではありません。現代社会は「喧嘩がいけない」とか「争いがいけない」となってしまったので、文学論などもしづらくなっています。でも私の学生時代まではありました。

―― 飲み屋とか、特定の地域(よく名前が挙がったりしますが)にしょっちゅう作家さんが集まって喧嘩しているといった話もありました。

執行 ありました。私も大学生まではよく、好きな作家の家に遊びに行って、みんなで文学論をやりました。それで一時期、大喧嘩になったとか、いろいろあります。

―― それも含めて、体当たりということですね。自分の信条をそのまま吐露して。

執行 これはもう、やって失敗して、覚えるしかない。

―― その繰り返しこそが、一つの結果を作っていく。

執行 もちろんそうです。

―― 自分自身を作っていくということですね。

執行 武士道も全部そうです。山本常朝も「自分が失敗していくしかない」といったことを言っています。人の失敗から学ぶことはできません。人とは運命が違うから。

―― だからこそ体当たりを繰り返して、どんどん失敗して覚えていく。

執行 今は「嫌われたくない」と思う人が特に多いようですが、人に嫌われることは非常に重要なことです。どういう人にどう嫌われたかで、また自分がわかるわけです。だからあえて嫌われるように人生を送ってみなければダメです。私はそう思います。

 嫌われたって、何てことありません。「得しよう」と思っていなければ。だいたい、「好かれよう」というのは卑しいじゃないですか。なぜ、現代人はそう思わないのでしょう。


●かつては「売れた本」は「程度が低い」とバカにされた


―― 不思議な歌がありまして、小学校1年生になったときに歌う歌で、「友達100人できるかな」というものがあります。ああいう発想はよくないということですね。友達の数ではない。最近は、とくにツイッターとかフェ...
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