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人生の知恵が湧くのは「体当たりして失敗した体験」から

「葉隠武士道」を生きる(7)「真心」以外は通らない

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
人間関係を良くするために、「スキル」が書かれた本を学ぶ人がいる。もちろん、学ぶことは構わない。だが、結局は「真心」でぶつかるしかない。人間関係を「スキル」でやろうと思う心がけがダメなのだ。「スキル」を学んでどうこうしようとする人で、成功した人を見たことがない。とはいえ、真心で当たれば好かれると言っているのではない。99%に嫌われる可能性もあるが、それでも1%の合う人がいれば、それで十分ではないか。「真心が通じるかどうか」は実際に体当たりして、ときにしくじりながら覚えていくしかない。人生の知恵は、体当たりして失敗した体験からしか湧いてこない。(全12話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14:17
収録日:2021/04/08
追加日:2021/08/20
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≪全文≫

●「一人の人間の正直な魂=真心」は、わりと変わらない


―― そういう部分で言うと、「今の自分」が、今後どんどん伸びていく可能性はあるにしても、自分にとっては「最高の自分」であるという前提で、「今の自分ができる最大のことを、どのようにしていくか」という発想に立ったほうがいい、ということになりますか。

執行 今の自分が最高というのは?

―― たとえば読書量で見た場合、執行先生と比べると明らかに自分は読んでいない、という人も多いと思います。それでも今までの自分の歴史を考えると、今の段階が一番読んでることは間違いない。

執行 そういうことですね。それだったら、そのとおり。そのときの実力。小学生なら小学生なりにやらなければダメです。

 たとえば文学の読み込み能力とか、そういうわかりやすいことで言うと、私は小学校4年生のときにゲーテの『若きウェルテルの悩み』を読みました。すごく感動して、感動した文章には線を引きました。

 その後、65、6歳の頃に、もう一度読み直しました。新しく本で買って、このときも感動した部分に線を引いた。小4で読んだ本も持っていたので試しに照合してみました。すると、97、8%感動した部分が一緒でした。

―― それはまた、すごいですね。

執行 だから小学生も同じことなのです。まだ人生を経験していないときに感動したものと、65歳になって、会社も創業し、いろいろな人生経験をしてきたあとに感動するものと、一人の人間の正直な魂は、わりと変わらないのです。

 私はそれが「真心」といって、一番大切なものではないかと思います。「清純」というか、子供の頃に持っていた「人間としての初心」です。だから頭ではない、魂なのです。本で感動して線を引いたというのは、魂ですから。

―― 胸が動いた。

執行 感激したところです。その部分が95%以上一緒。そのくらい人間の魂は変わらないと確信を持ちました。だから何かの事情で変わるという人は、違うところを見ているのです。武士道でいうと、山本常朝が『葉隠』で一番大切にしているのも魂です。だから魂以外のところを見ると、『葉隠』もわからなくなります。

―― 処世訓、処世的な部分ですね。「こうやったら世過ぎ身過ぎがうまくいきます」みたいなところは、知恵の話になってしまうけれども……。

執行 ただ結果として、処世訓にもなりますけれども。私は『葉...
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