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勝ち負けが「ついで」だからこそ、自由な発想ができる

「葉隠武士道」を生きる(10)武士の「本当の勝ち」とは

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
武士にとって、「本当の勝ち」とは「武士道の貫徹」だった。武士道を貫徹できるならば、勝ち負けは「ついで」だと考えていた。だが、そのように考えればこそ、むしろ実際の戦いの場では発想が自由になった。勝ちを意識すると硬くなり緊張してしまうが、武士道を貫徹することを考えれば、好きに生きられるようになる。「嘘をつかない」「約束を絶対に守る」ということも、そうである。これを大事にしていれば、絶対に信用は高まる。ジェントルマンがいた時代の大英帝国が世界を制覇できたのも、どんなに犠牲を払おうとも約束を守ったからである。相手がどうであれ、自分がした約束は絶対に守る。そのためには軽々と約束しないことも重要となるのだ。(全12話中第10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13:19
収録日:2021/04/08
追加日:2021/09/10
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≪全文≫

●「自由な発想」を掴み取る、最高の方法


―― ちょっと話を変えて、「武士としてどう戦いに勝つか」という話をお聞かせください。「武士は犬死にしてもいい」というのが、『葉隠』の一つの思想ですね。

執行 そういう考え方ですね。

―― ただし一面で、武士は戦いを生業にしていた人たちでもあり、当然、勝ち負けがある。では実際どうやって勝っていくのか。まず武士にとって「本当の勝ち」とは、何なのでしょう。

執行 「本当の勝ち」は、武士道の貫徹です。武士道という一つの強大な文化があったわけですが、この文化を貫徹することが、武士に与えられた一番の成功。ついでに「勝ったほうがいい」ということです。だから、勝ち負けは「ついで」と思ったほうがいい。

 ただ歴史を見ると、「ついで」だからこそ自由な発想が湧くこともあります。

―― それはどういうことですか。面白いですね。

執行 「勝ち」がメインになると、真面目になったり、緊張してしまう。そうではなく、真田幸村にしても楠木正成にしても、色々な武士が好きに生きられたのは、自分は武士道の貫徹だけを考えていたからです。だから戦いは自由になる。かえって戦いのときは、ものすごく発想が自由になるのです。

―― 「負けたらどうしよう」ということではなく。

執行 負けても勝ってもいい、どっちだっていいのですから。江戸末期だと近藤勇と土方歳三、戦国時代だと真田幸村、南北朝時代だと楠木正成、この人たちを研究すると、今、私が言っていることがわかりやすい。要するに武士道さえ貫徹すればいいのですから、あとの政治情勢や社会情勢は、自由に都合よくとれるのです。それが武士道だということです。

―― なるほど。

執行 「勝つためのもの」というのは間違いで、もちろんありますが、勝ちは二の次です。

 私のことで言うと、私も武士道の貫徹がすべてです。死ぬまで『葉隠』を貫徹できるかだけが、私の生命に与えられた宇宙的使命だと言っているのです。私は今70歳まで来ていますが、まだ貫徹できるかどうかは死ぬまでわかりません。たとえ最後の日でも、卑しいことを考えたら崩れてしまう。最後の日まで貫徹しなければと考え、毎日やっているのです。

 これまで本もたくさん読んできたし、事業もある程度うまくいきました。これは「ついで」です。「ついで」の良さを、自分のこととしてお話しすると、読...
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