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「嘘つきは泥棒の始まり」という言葉が突きつける真実とは

「葉隠武士道」を生きる(12)自分の卑しさと対面せよ

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
「卑しさ」は、本人が「卑しさ」に直面しようと思わなければ自覚できない。戦後の日本人は「卑しい」ことを「正しい」と言ってしまった。「日本は平和憲法だからすごい」というのもそうである。領土を全部取られても平和国家を貫くならば、「バカな国家」とは言われるが「美しく」はある。だが現実の日本は、アメリカの武力をバックに、中国や韓国、北朝鮮に突っ張っている。これこそ「嘘」ではないか。かくも「言い訳」や「卑しさ」が正義になってしまっている国では、あえて「自分一人は違う」という気概が必要なのだ。その気概を持つためには、今の人と話すのではなく、武士の生き方を示した本を読むしかない。(全12話中第12話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:29
収録日:2021/04/08
追加日:2021/09/24
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≪全文≫

●物は取りようだからこそ、「本当にそうか」を問う


執行 ただ得を取った人たちは吉田茂を中心として、まさか、そんなもの(日本の平和憲法)が日本を長年支配するとは思わないでしょう。その人たちは、アメリカの占領軍を利用して、日本国がちょっとでも得するようにしたいと思っただけなのです。ところがそれが、これだけ根が深いことになってしまったということは、吉田茂もわからなかった。要は日本国民の罪です。

―― それは卑しい道を選択してしまった宿命なのですか。「卑しい」を1回取ってしまった。

執行 卑しさと直面させない文化が、日本を支配したからです。そっちが勝ってしまった。日本人も、卑しさと直面させられるほうに持っていかれたら、自分たちで立ち上がるに決まっています。「卑しい」なんて、誰だって嫌ですから。でも「卑しくないんだよ」と言ってしまった。

―― 「それは正しいんです」と。

執行 今のマイホーム亭主と一緒です。昔だったら「女房の尻に敷かれている」と言いましたが、今亭主で「女房の尻に敷かれている」と言う人は一人もいません。たとえば、女房がいばっていたとして、これを「いばらせてあげている」と考える。こういう発想と近いものです。それを恥ではなくしているのです。

―― 魯迅 の『阿Q正伝』では、阿Qがやられたことに対して、全部「俺は勝っている」と言い続けます。日本人も同じようになってしまった。

執行 魯迅で言えば、『狂人日記』もありますが、ああいう世界です。変な話ですが、私が30歳ぐらいのとき、知り合いで女房にいつも殴られているやつがいました。「何だよ、おまえ。女房なんかに殴られて。それでも男か」と言うと、「女のことで腹を立てるなんて、執行さんは心が狭い、狭い」と言われたのです。

「俺は男だから、女房なんてあんな女には殴らせてやっているんだ。男はそういう度量を持たなきゃいけない」と。同じようなことを言っていたのが日本人なのです。要は物は取りよう。そう取れば全部そうなる。だから「卑しさ」というのは、本人が直面しようと思わなければ自覚できません。

―― 今の価値観でいえば、「日本は平和憲法だからすごいんだ。われわれはそこまでしても平和を貫くんだ」という美しい価値観になっていますね。

執行 これが「本当」なら素晴らしい。何でもそうです。先程の愛と一緒です。「本当なら」。本当に平...
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