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貪り取る相手に従うのは、自分に「卑しい心」があるからだ

「葉隠武士道」を生きる(4)一番尊い命を、何に捧げるか

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
明治の初めには、日本でも『西国立志編』(スマイルズの『自助論』)や、福澤諭吉の『学問のすゝめ』が流行った。当時の日本人には「全部自分でやっていく」という気概があったのだ。そして、それは西洋も同じであった。しかし、社会主義や共産主義が隆盛になるにつれ、「うまくいかないのは、社会のせい」「誰かのせい」とする気風が強まってしまった。だが、すべてが自己責任だからこそ、命は尊いのである。そして、その尊い命を何に捧げるのかを考えるのが武士道であり、騎士道であり、宗教の根本なのである。もちろん、捧げようとする心を悪用して、自分を貪ろうと近づいてくる人もいるが、そういう人には一撃を食らわさなければいけない。(全12話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:36
収録日:2021/04/08
追加日:2021/07/30
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≪全文≫

●すべて自己責任の『自助論』から、「誰かのせい」の社会主義的時代へ


―― ここは面白いところですね。たとえば明治のはじめ頃は、『西国立志編』、いわゆる"Self-Help”(『自助論』)がベストセラーになりました。

執行 サミュエル・スマイルズですね。

―― 福沢諭吉の『学問のすゝめ』もベストセラーになりました。ある意味、「全部自分でやっていくんだ」という気概が明治の初期の頃は……。

執行 日本もそうだし、西洋もそうです。

―― それがだんだん、たとえば共産主義社会主義になると、「いや、あなたがダメなのは社会のせいです」と。

執行 「国のせいだ」とかね。

―― 「こういう制度だから、あなたは常に損をする。だからダメなんです」という思想に変わっていきました。

執行 だから今は、どんどん変わっています。「今のいじめやパワハラもそうだ」ということです。今の人は認めないでしょうが、そういう文化から出てきたのです。

 人生は全部、自己責任なのです。「なぜこんなことが、わからないのか」ということです。そして自己責任の中で最も自分に厳しく、一番生命燃焼ができる文化が、武士道と騎士道だったのです。その下にもずっとありますが、みんな自己責任で、自己責任以外はありません。

―― 先程、田中新兵衛の話がありましたが……。

執行 あれは極端ですが(笑)。

―― いわば自分の落ち度で、腹を切るところまでやる。いじめもそうで、「それって本当に私のせいですか?」という思いはもちろんあるとは思いますが、いじめられた自分自身に不覚なところはなかったかを考えていかないといけないということですね。

執行 その不覚を考えるのが、文化です。これが一番厳しいのが武士道で、武士道以外でも、少し前まで人間の文化は全部、自分の落ち度や不覚を考えて見つけ出すのが勉強であり、鍛錬、修練でした。その落ち度を見つけさせるのが、禅などでも、先生の役目だったのです。

―― その人自身の落ち度。

執行 親の役目もそれで、躾(しつけ)とはそういうものでした。そこに上手い下手はありますが、実際はそうだったのです。

―― たとえばいじめられて帰ってきたとき、「そんなことされて、おまえに悪いところはなかったのか」とか。

執行 「じゃあ、おまえはどうしたんだ」とか「なんで、そんなことになったのか」とか、そういう話です。

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