テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
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「家制度」に立脚した武士道は「専守防衛」の哲学である

「葉隠武士道」を生きる(1)武士道に生きるとは?

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
執行草舟が「葉隠武士道」に立脚した生き方の真髄について語る。「武士道」について論じると「道徳」と誤解されることが多いが、これは大きな間違いだと執行草舟は説く。執行草舟にとっての「武士道」とは『葉隠』に尽きるが、『葉隠』がめざすのは「生命の燃焼」だけである。ボロボロになるまで体当たりを繰り返し、燃え尽きて死ぬことに価値を見出すのだ。しかも、武士道は決して「戦いの哲学」ではない。日本の根幹をなす「家制度」に立脚した「専守防衛の哲学」なのである。はたして、その心とは?(全12話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12:53
収録日:2021/04/08
追加日:2021/07/09
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≪全文≫

●本当の「武士道」とは何か


―― 先生、どうぞよろしくお願いいたします。

執行 はい、どうぞよろしく。

―― 執行先生に以前、「10ミニッツTV」で「武士道の神髄」という講義をお願いして、大変ご好評をいただきました。今回はその武士道について、もう少し現実生活というか、いかに日々の暮らしに武士道の考えを生かしていけばいいかをお聞きしたいと思います。

執行 ここで一つ武士道について言っておくと、確かに「武士道」という言葉を使っていますが、私がずっと信じ、愛し、実践しているのは、『葉隠』だけということです。武士道というと、だいたいが倫理観や道徳といった江戸時代的で朱子学的なものが多いですが、私の場合、どちらかといえば、そういうものはあまり関係ない。体当たりの『葉隠』的な武士道だけが好きなのです。そこはよく踏まえていただければありがたいです。よく「道徳的な人間」と、誤解される場合が多いので、けっこう迷惑しているのです。

―― そこも大事なところだと思います。今回、菅野覚明さん(東京大学名誉教授)の『本当の武士道とは何か』(PHP新書)という本をお持ちしましたが、菅野先生がおっしゃっているのも、ある意味で、今、執行先生がおっしゃったことに近いですね。

執行 そうです。菅野覚明は「無頼の思想」というか、戦国時代や南北朝の楠木正成などの武士道から来る「自由奔放な戦う力」をちゃんと捉えています。

―― そうですね。

執行 ただ、われわれのイメージだと、江戸時代のしっかりした封建道徳武士道だと思ってしまっています。あれはどちらかというと武士道を抑える力で、要は朱子学です。

―― そうですね。そこが混ざって、さらに新渡戸稲造の『武士道』というものもある。

執行 あれは有名ですから。ただ、あれも朱子学です。

―― さらにいえば朱子学プラスキリスト教もある。

執行 そうです。ただ内容はよくて、新渡戸さんの人格でしょう。要するに武士道にキリスト教を加味している。ものの本にも1回書いたことがあるのですが、「文学」になっています。日本の武士道を「詩」にしてある。ポエムであり、文学です。そこが新渡戸武士道の優れたところで、あれはまた朱子学だけとは違うのです。

―― そうですね。

執行 ただ、道徳なんです。

―― はい。

執行 だから私には、とても守れない。文学としては面白く読む...
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