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オーバーアナリシス、オーバープランニングを「直観」で破る

営業から考える企業戦略(2)データより現場のリアリティ

田村潤
元キリンビール株式会社代表取締役副社長
概要・テキスト
日本企業の不振の主な原因は3つある。「オーバーコンプライアンス」「オーバーアナリシス」「オーバープランニング」だ。企業の戦略において、現状分析と翌年の計画を立てるためにもデータは欠かせないが、分析のしすぎはおかしい。なぜなら、データは、過去の自分たちの行動の結果に過ぎないからだ。大事なのは、現場で無意識的に感じられるモヤモヤとしたものであり、そこから生み出される「直観」なのである。それこそが現場のリアリティであり、現場の創造性だと田村氏は強調する。(全6話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:08:42
収録日:2020/09/25
追加日:2021/07/19
≪全文≫

●過去の行動の結果にすぎない「データ」で将来を予測する愚


―― 少し話題を変えますが、先ほどおっしゃった「強みを伸ばす」ということに関してです。その商品のブランドについてもそうですが、「強みの補強」を実践していくにあたっては、本社が調査に入ったり、いろいろなリサーチをかけて、「こういうビールが求められているようだ」といったデータを取るなどして戦略を立てると思います。

 あるいは先生のご本(『キリンビール高知支店の奇跡』)にも、高知支店の調子が悪いときに、本社から「どこが悪いのか」とリサーチチームがやってきて、いろいろなデータを集めるというシーンがありました。

 なぜ、そのような調査と企画が――働く人からすれば、憧れをもたれるケースも多い部署ではありますが――うまくいかないのか、ということについて、どのようにお考えですか。

田村 世界的な経営学者である一橋大学の野中郁次郎先生が、日本企業の不振の原因は「オーバーコンプライアンス」「オーバーアナリシス」「オーバープランニング」だとおっしゃっていました。私が講演するとき、時々このワードを借りてお話しします。これが一番ウケます。皆が目を輝かすのです。

―― なるほど。

田村 眠たそうな人も、これを聞いてパッと目を覚まします。つまり、日本のビジネスマンが一番苦しんでいるのは、この問題なのです。「コンプライアンスのしすぎ」「分析のしすぎ」「計画のしすぎ」。これは共通認識ですね。

 なぜうまくいかないのか。分析というものは「データ」ですが、しかし時間は次々と移り変わっているので、どんどん過去のデータになります。キリンビールについても、翌年のプランがうまくいった試しがなかった理由の1つは、「過去のデータ」に基づいて翌年を予測しているからです。

 よく考えると、過去のデータというのは、過去のわれわれのアクションの結果にすぎません。自社も他社も、過去のアクション=行動の結果が数値として出ているわけです。それを基に将来を予測して、計画をつくっているわけです。これはおかしいのです。つまり、過去のわれわれの行動を基に、将来を決めているのです。

―― 特に1年前とか2年前というと、すぐ直近の話ということではありますが……。

田村 これはおかしいと思いませんか。

―― 新しいことやったらどうするのだということですか。

田村 そう...
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