営業から考える企業戦略
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
シェア軽視の高付加価値経営や不利益部門の撤退がダメな理由
営業から考える企業戦略(5)切り捨てる経営の大失敗
田村潤(元キリンビール株式会社代表取締役副社長/100年プランニング代表)
日本企業の弱体化の原因はどこにあるのか。たとえば一時、「これから日本は低価格帯の商品は途上国に任せて、高付加価値経営を目指すべきだ」という議論が流行った。あるいは、「不採算部門は切り捨てるべきだ」という議論も盛んに行われた。その結果、現出したのは、すべてのジャンルで負けていく姿ではなかったか。田村氏は、「それは、理念が落とし込まれていなかったからだ」と喝破する。それはどのようなことなのか。(全6話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分37秒
収録日:2020年9月25日
追加日:2021年8月9日
≪全文≫

●「日本は高付加価値経営だ」という戦略は、なぜ失敗したのか


―― もう一つ、日本企業の戦略としてお聞きします。今、世界的に日本企業が、これまでお家芸といわれていた分野でシェアを奪われるといったことが見られます。その一つの原因になるのか、日本では一時期、いわゆる「高付加価値経営」という議論が流行りました。これから韓国なり中国なり、次々と発展してくる国々が、これまで日本が得意としてきた低価格の製品を作るようになるので、日本は間に合わない。低価格の製品はそうした国々に譲ってしまい、日本はより高付加価値な商品を売って、道を切り開いていくのだ、というものです。

 調べてみると、例えば1992年の松下電器の経営方針発表会で高付加価値経営が謳われ、「松下電器が水道哲学を捨てた」などと日本経済新聞にも書かれました。ただ、ふり返ってみると、一番シェアの多い安い製品をやらないと決めたために、日本企業が弱体化していったのではないでしょうか。

田村 それはそうです。安い価格の商品を安く作るということに、挑戦しなければいけなかった。松下幸之助さんの理念である「水道哲学」は、日本だけではなく、世界中の人々に必要とされているものを提供するというものです。ですから、安いモノが必要とされているところに安く作って提供し、そこに住む人々を幸せにするという理念を捨てたのです。そこで取り組みやすい分野、得意な分野だけを扱い、あまり儲かりそうもない分野は切り捨てる。それによって、企業体質が弱くなりましたね。なぜなら安く作るという技術を諦めてしまったのですから。これは、かなり致命的です。

―― そうすると価格競争に負けるのは当たり前の話ですよね。

田村 そうです。だから、理念を形骸化させたということに尽きるのではないでしょうか。


●「徹底的に実行」しないと、戦略の正否すらわからない


田村 シェアはやはり大事だと思うのです。私は「数値より理念が大切だ」と言っていました。ですが誰よりも数値を見ていたのは、私を含めた私の部下たちです。なぜなら、お客様に喜んでもらわなければいけない、信頼してもらわなければいけないわけです。信用して信頼してもらわないといけない。信頼されると、必ず数字が上がり、シェアが上がってきます。ですから、シェアが“健康診断”の最も重要な指標なのです。

 ですから、頑張っていてもシェ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環
ハラスメント防止に向けた風土づくり(1)ハラスメントの概要
増え続けるハラスメント…その背景としての職場の特徴
青島未佳
キャリア転換で人生を成功させる方法(1)2つの大きな潮流
なぜ40歳でキャリアについて一度考え直す必要があるのか
為末大
会社人生「50代の壁」(1)“9の坂”とまさかの坂
サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方
江上剛
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(1)ビジネスのヒントは歴史にあり
『失敗の本質』、中国古典…ビジネスのヒントを歴史に学ぶ
三谷宏治

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦