徳川将軍と江戸幕府の軌跡~吉宗編
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東京の桜の名所は徳川吉宗がつくったものだった
徳川将軍と江戸幕府の軌跡~吉宗編(3)吉宗神話が生まれた背景
8代将軍・徳川吉宗は、「下から目線」、つまり庶民からとても評判のいい人間であった。その理由は、まさに吉宗が庶民感覚のわかる人間だったからである。吉宗が江戸各地に庶民たちのために行った施策と、その思いに迫る。(全5話中第3話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:7分24秒
収録日:2020年1月7日
追加日:2021年7月24日
≪全文≫

●東京の桜の名所は吉宗がつくった


山内 本題に戻ると、「下から目線」つまり下の人間たちの間に、(全て実像であったかは疑わしいけれども)一種の吉宗伝説、吉宗神話、あるいは吉宗ファンをつくったということです。吉宗は政治家ですから無駄なことはしないけれど、ただそれは政治的な方角だけではなく、為政者として庶民の日々の生活に潤いを持たせることが政治を安定させる大きな基礎的な条件になる、ということを知っていたのです。

 それは、どうしてか。例えば、現在でいう東京都北区の飛鳥山、小金井、地名はなくなってしまったけれど北一輝の豪邸があったことで知られている中野桃園町は、桜の名所です。それから隅田川に面しているところに木母寺(もくぼじ)がありますが、そもそも隅田川に沿ってある桜の木は誰が植えたのか。また南でいうと、御殿山があります。もともと御殿山は桜の名所でした。これら桜の名所をつくったのは、基本的に吉宗なのです。

―― それはすごいことですね。

山内 なぜ、こういうものをつくったのか。庶民たちが、家族あるいは友人や仲間たちと一緒に、休みの日などに憩いや家族の団欒で出かけていき、みんなで花見をしたり、あるいは梅を見たり、桃を見たり、柳を見たりする。特に春の季節は桜を見る。これらは、人々の心を和ませる。そして、家族のつながりを豊かにし、絆を強く固くしていく。そういった場所になるのです。

 そこに茶店などの商いが出て、花を見ながら、酒盛りや食事をする。屋台が出て、おでんを食べる。当時は、綿あめがなく、水あめがありました。

―― 水あめだったのですね。

山内 水あめに類するものがあり、吉宗自身も水あめは好きでした。晩年、老年になっても、薬と同じような感覚で水あめを食し、おいしい水あめがきたときは顔をほころばせて非常に喜んだそうです。

 そういうものを庶民たちもまた、屋台や茶屋、茶店などで楽しむ。そのような空間を、北区の飛鳥山、御殿山、それから中野、小金井、隅田川といったところにつくって、整備していったのです。

―― 庶民を楽しませることが大事だという。

山内 そういった感覚ですね。


●庶民が「幸福感」を感じられる場所に


―― (吉宗は庶民を楽しませるのが)うれしかったのですね。

山内 うれしかったと思います。しかし、吉宗は何も計算してなかったわけではありません...

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