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御触書寛保集成と公事方御定書に見る徳川吉宗の功績

徳川将軍と江戸幕府の軌跡~吉宗編(4)「法の支配」が行き届いていた時代

概要・テキスト
「庶民感覚」を身につけていた8代将軍・徳川吉宗。浅草の近辺、隅田川の繁栄や花の風情など、現在につながる庶民の楽しみをつくったのも吉宗といえるだろう。加えて、御触書寛保集成と公事方御定書が編纂されるなど、「法の支配」が行き届いていたのも吉宗の時代だった。(全5話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:07:38
収録日:2020/01/07
追加日:2021/07/31
タグ:
≪全文≫

●庶民の楽しみを作り上げた徳川吉宗


山内 だから、お金がある町人はお金があるなりに、お金がない町人はお金がないなりに、子どもを連れて出かけて、飴玉あるいはお菓子などを買ってあげる。その分に応じて、弁当を設えたり作ったりするところから、芸者やさまざまな女性たちをはべらした大臣たちの遊びまで、いろんなレベルがありました。

 今も基本的に同じでしょう。遊園地に行くことで慎ましやかに幸せを感じる人がいる。余裕がある人は、個人ジェット機まではいかなくても、海外旅行に行く。

 人々にはそういった余裕が必要なのです。それがステップアップしていくのも、勤労の楽しみ、働くことの喜びにつながっていくのです。

 昨日までは遊園地で楽しんでいた人が、今日になってみると子どもを連れて弁当などを設えるようになってきたりする。あるいは茣蓙を敷いたりと、少し余裕のある所へステップアップする。

 今度は、お山参りや富士講といったように江戸市内や江戸近郊などで旅行、あるいは旅行もどきのことをする。このような、さまざまなことを工夫できる空間につくっていったわけです。

―― 日本の庶民の楽しみは、ある意味、吉宗がつくったともいえるのですね。

山内 現在につながっている場所との関係でいうと、ここまでのいろいろな空間、飛鳥山や御殿山、浅草の近辺、あるいは隅田川の繁栄や花の風情は、吉宗でしょう。

―― ヨーロッパの皇帝たちとやっていることが全く違うのですね。

山内 違います。基本的にベルサイユ宮殿は、ブルボン朝の王侯貴族だけのものであって、それらを開放したり、近辺に庶民を入れたり、という発想はありません。

 江戸の場合、いろいろな機会に江戸の中、表空間までを、庶民に開放する日があったわけです。これは名主(みょうしゅ、なぬし)といったレベルの限られた町人たちだけでしたが、そのように開かれる日もあったのです。

 一方、ヨーロッパの王侯貴族の場合には、よもやベルサイユ宮殿の中でしかありませんでした。


●当時、日本は「法の支配」がしっかりと行き届いていた


―― (時代的には)かたやジャン・バルジャンの『ああ無情』の世界で、かたや(吉宗が治めた)江戸庶民の世界。あまりにも違いますね。

山内 犯罪者という意味では当時、日本でももちろんいたし、その犯罪者の処罰(パニッシュメント)は非常に極端...
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