徳川将軍と江戸幕府の軌跡~吉宗編
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
武士とは何か、『葉隠』『忠臣蔵』に込められた「覚悟」
徳川将軍と江戸幕府の軌跡~吉宗編(5)天下泰平と「武士の忠義」
歴史と社会
8代将軍・徳川吉宗の時代、「法の支配」が行き届いていた天下泰平の世の中であった一方で、赤穂浪士の仇討ちに代表される「武士の忠義」も存在していた。武士とはいったい何か。どのように「法の支配」と折り合いをつけていたのか。吉宗のブレーンだった荻生徂徠、柳沢吉保の話も交えて解説する。(全5話中第5話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:13分51秒
収録日:2020年1月7日
追加日:2021年8月7日
≪全文≫

●「死ぬことだけを覚悟すればいい」


―― 日本の統治者、行政を束ねる人たちは、とても立派な人たちでした。人の痛み、人の心の喜ばせ方といったものが分かる人が登用されている。それは、ベースに儒教的なものがあるからですか。

山内 あると思います。やはり「仁」という思想です。仁という思想は、非常に大事な儒教の骨格で、今風にいえば、「ヒューマニティー」「人道主義」「人道愛」といった言葉に繋がっていきます。これは、武士階級、あるいはエスタブリッシュメントの大きな仕事は下の人々――いわゆる町人、職人、農民といった人達――に対して、慈しみをもって支配しないといけないということです。

 なぜなら、彼らの税――農民からの年貢、商人からのさまざまな冥加金(みょうがきん)――によって、幕府、大名、ひいては武士は最終的に、禄高、俸禄米(蔵米)などを得て、生活しているからです。

 そういう意味でいうと、彼らには「不労所得者」という自覚があるのです。いざというときは国防も必要であり、また社会的安定・治安の維持のために、彼らは自分の命を覚悟しなければならなかったでしょう。そのような責任感や自覚を持っての武士なのです。

 埴谷雄高(はにやゆたか)という、作家がいるのですが、とても的を射たことを言っていました。彼は吉本隆明(よしもとりゅうめい)と並んで、戦後の文学に大変大きな影響を与えた人で、『死霊』という作品で知られています。埴谷さんは武家の出身で、それを強く自覚している人でした。もともと本名は「般若豊」といい、般若をもじって「埴谷」としたそうです。

 その彼がエッセイで「武士とは何か」について、「死ぬということだけ覚悟しておけばいい」と書いていて、私は感心しました。「何かある時に、死ぬことを恐れてはダメです。死ぬことのために彼ら(武士)は、庶民たちに普段食べさせてもらっているのです」「何かあったときに、自分が犠牲にならないといけない。自分の命を差し出す覚悟さえあれば、武士は務まる」と。非常に簡単な言い方ですが、「武士とは何か」ということについての簡潔な定義だと思います。

 何かあったときに、農民や商人や職人たちに責任を委ねて逃げたら、武士ではない。武家や武士は、いろいろな犯罪者が出てきて、庶民たちが苦しんだり生命の危機に陥ったりしたときに、そこに立ちはだかって相手と渡り合って斬り合わ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
寛政の改革・学問吟味と現代の教育改革(1)学問吟味の導入と正統性の問題
松平定信のもう一つの功績「学問吟味」の画期性に注目
中島隆博
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子