歴史から見た中国と世界の関係
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
日清戦争後の三国干渉以来、日本に難しい選択を迫る米中対立
歴史から見た中国と世界の関係(9)米中対立の行方~3つのシナリオ~
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
今後の米中対立は3つのシナリオが考えられる。1つ目はアメリカの勝利。2つ目は中国が世界大国になる。3つ目は米中とも疲弊して、多極世界が生まれる。日本にとってどれが望ましいかを考え、優先順位や戦略目標を決めることが重要。このとき何より優先すべきは、唯一の同盟国であり、自由主義や民主主義など価値観をともにするアメリカとの関係。その上で中国が法の支配を尊重する外交路線に戻るよう働きかける。(全10話中第9話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分04秒
収録日:2020年8月21日
追加日:2020年10月26日
≪全文≫

●米中対立における短期的に考えられる3つのシナリオ


―― これは一種の思考実験といいますか、歴史を振り返っていえば経綸問答になるかもしれませんが、中国としてはこの状況を打破するために、どのように動く可能性があるでしょう。

中西 まず短期的には3つぐらいのシナリオが考えられると思います。端的に申し上げましょうか。

 シナリオその1は、アメリカが習近平政権の中国を叩き潰して勝利し、「パックス・アメリカーナ パート3」を再確立する。冷戦終焉でソ連を倒し、今度は習近平中国を倒した。だから「パックス・アメリカーナは永遠なり」というものです。このシナリオがまず考えられます。

 2つ目のシナリオは、「いやいや、そうではない。中国は徐々に対米戦略を有利に運び、アメリカの圧力を押し返して、中長期的に中国が世界大国になる可能性を維持しようとする。アメリカはどこかで息切れしてしまう」というものです。

 3つ目は、米中いずれも激しく対立し合い、お互い疲弊して世界がしばらくカオス的な状態になり、そこから徐々に多極化が進むというものです。米中いずれが覇権国になるわけでもない、多極世界が生まれていく。ロシアにとって一番望ましいのは、これでしょう。

 この3つのシナリオは、日本の選択肢を考えるにも非常に大事で、長期的に考えると第1のシナリオは、あると思います。アメリカが中国を叩き潰し、共産党体制が崩壊するとなると、この場合、その後の中国国内が混乱する可能性があります。ですからアジアの一員としては、これが望ましいシナリオとは思えません。20世紀前半の動乱のアジアになってしまいます。

 しかし、2つ目のアメリカの攻勢を中国が跳ね返し、いっそう強大化して世界大国になる道を進むのは、日本としてはそれこそ日本のサバイビング・スペース(生存スペース)がなくなるのではないか。全体主義中国が、こういう道をたどることは好ましいとは言えません。

 3つ目のシナリオですが、米中が対立を激化させて、米ソ冷戦でいえばデタント状態をいくつか迎え、両方とも疲弊して世界がカオス化するのも、やはり困ったことです。

 今3つのシナリオを中心に考えましたが、米中以外の国々、例えばヨーロッパもイギリスも、あるいはインド、豪州、ASEAN諸国、そしてロシア、日本も含めて、このようなシナリオをそれぞれにらみながら、どんな選択肢がある...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治