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反中外交に大転換、インドへの接近を始めたオーストラリア

歴史から見た中国と世界の関係(6)豪・印が対中国強硬路線へ

中西輝政
京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者
情報・テキスト
オーストラリアもコロナによって、親中路線から反中外交に大転換した。中国から「オーストラリアからの食肉の輸入禁止」などの強い措置を取られても、いっさいへこまなかった。さらに長年、仲が良くなかったインドとの接近も始めた。インドも中国との国境紛争で数十人の死者を出したこともあり、いまやオーストラリアはインドと軍事協力を行うまでになっている。(全10話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:07:04
収録日:2020/08/21
追加日:2020/10/12
≪全文≫

●曖昧路線から反中外交に大転換したオーストラリア


―― 大英帝国の流れでいうと、アジアにはオーストラリアがあります。オーストラリアはこの間、どちらかというと親中と反中で揺れ動いていました。それが香港問題等々を受けて、態度がある程度、固まってきていると見てよろしいですか。

中西 オーストラリアこそ、まさにコロナが親中あるいは曖昧路線から、反中外交に大転換させた大きな要因だったと思います。2020年3月にオーストラリアのスコット・モリソン首相が記者会見で、「コロナの発生源に関する第三者の独立した調査が必要」という声明を出しました。特に中国を名指ししたわけではありませんが、それに対し中国は非常に激しく反論して、「そういう非友好的な発言は許せない」と一挙に激情した反応を示しました。

 それがオーストラリアからの食肉の輸入停止という、非常に強い措置になりました。またオーストラリアから大量に輸入していた大麦の関税を一挙に80パーセントに上げる。これはもう禁止的関税です。それからオーストラリアワインの最大の買い手は中国で、これも輸入を許さない。中国の観光客がオーストラリアに行くことも、今後は許さない。そういう矢継ぎ早の強硬手段に打って出たのです。

 オーストラリアにとって最大の貿易相手国は中国ですから、普通ならここでオーストラリアはへこむはずです。ところが今回はへこまず、一挙に「受けて立つ」と非常に強い反応を示した。「なぜ中国がこんな反応を示すのか、われわれは理解できない」と跳ね返し、返す刀でインドとの接近を始めます。

 日米豪印の4か国が手を結べば、インド太平洋地域で中国の進出を抑止できると、これまでよく言われていました。日本の政治家やアメリカ当局も、そうしたインド太平洋戦略構想を口にしていましたが、従来オーストラリアもインドも中国と表立って敵対関係になりたくない気持ちが強くありました。そのためこの2国は安全保障上のいろいろな取り組みにも、日米側にあまり寄ってきませんでした。

 ところが2020年6月、7月、オーストラリアは中国との関係悪化を受けて様子が変わってきました。インドも中国との国境地帯で軍事的紛争が起こり、インド兵から十数名の死者を出しています。中国が非常に強い姿勢で国境で事を構えようとしてきたのを見て、インドは「これは大変なことになる」と、脅威感を非常に高めました。足元がコロナで揺らいでいるところへ、中国に国境で押し込まれたら、もう元へ戻せないというわけです。


●インドとオーストラリアで軍事協力も始まった


中西 ここでインドが一つ行ったのが「Tik Tok」をはじめ、全ての中国製アプリをインド国内で一切使用禁止にするという非常に強い措置です。同時にオーストラリアと接近しました。
 従来オーストラリアとインドはあまり仲が良くなく、これは大英帝国の時代から続いています。19世紀に犯罪者の流刑地だったオーストラリアは、インドから見れば格下の国です。そういう過去の経緯もあって、オーストラリアとインドはお互いあまり接近したくない国だった。それが一挙に溶けてなくなり、印豪の2プラス2、つまり外相と防衛相の4者による非常に強固な軍事的安全保障上の提携関係が約束され、いろいろな軍事協力も合意されたのです。これがこの6月、7月の話です。


●「手負いのドラゴン」――中国が過剰に強く反応する理由


 コロナの影響により、さまざまな国の態度が変わり、それに対して中国が過剰に強く反応している。これがいったいなぜなのか。それが今、世界中のチャイナ・ウォッチャーが関心を持っていることです。

―― なぜなのでしょう。

中西 一説にはコロナの責任を押しつけられる、あるいは中国だけが悪者にされて孤立化する、そういう可能性を排除しようとしているといわれます。そこから、あえて逆攻勢に出て、諸外国と問題をつくり出す。中国に強く迫ると、中国は激しく反応する。「手負いのドラゴン」という言葉があり、「中国に強く言いすぎると、関係が修復できなくなりますよ」というわけです。

 諸外国と問題をつくり出し、肝心の問題をうやむやにする。これは極めて小規模には、北朝鮮がよくやる手です。レーニンの時代からある、共産主義の対外戦略の一つのパターンです。
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