医療改革~医療費抑制のための二つの方向性~
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「ヤードスティック競争」の原理を取り入れるべき!?
医療改革~医療費抑制のための二つの方向性~
政治と経済
伊藤元重(東京大学名誉教授)
先進諸国の中で最速で高齢化が進む日本にとって、医療費削減は最重要課題だ。いわゆる「西高東低」といわれる後期高齢者医療費格差の現状や、医療供給体制の見直し策を踏まえつつ、政府で今議論されている医療費抑制のための医療改革の二つの方向性を伊藤元重氏が解説する。
時間:11分21秒
収録日:2014年10月27日
追加日:2014年12月22日
≪全文≫

●高齢化社会・日本の医療費の現状と今後の最重要課題


 今日は、今、政府の中で議論されている社会保障改革、その中でも特に医療の改革についてお話をしたいと思っております。

 これから高齢化が進んでいく中、日本の財政の中でも社会保障費が最も大きな位置を占めるということは明らかです。その中でも特に医療費が高齢化に非常に深く関わって、これから急激に増えていくということが懸念されています。従いまして、日本の医療の質を下げない中でどのように医療費を抑制していくかということが今、大きく問われていることになります。

 ちなみに、日本の現在の医療費の規模は、諸外国と比べてそれほど高いわけではないと言ってよいと思います。日本の総医療費をGDP(国内総生産)、経済規模で割った数値は、9~10パーセントあたりの数字だと記憶していますが、これはOECD(経済開発協力機構)諸国、つまり先進国の中で、大体真ん中ぐらいにあると言われています。

 日本は、既に先進国の中で最も高齢化が進んでいるわけですから、これだけ高齢化が進んでいるにもかかわらず、日本の医療費がこの水準に抑えられているということは、現時点において、日本の医療が諸外国に比べて極端に無駄が多いというわけではないということを強調しておきたいと思います。

 ただ、今後も日本は世界の中で最も早いスピードで高齢化、あるいは少子高齢化が進んでいくということで、今のような日本の状態からスタートしても、今後医療費が爆発的に増えてしまって日本の財政を圧迫するという懸念があることは事実です。従って、どうやって医療費の伸び方を減らして抑えていくかということが、日本の医療の重要な課題となっています。


●都道府県別の後期高齢者一人当たりの医療費は「西高東低」


 医療は非常に複雑な仕組みですので、どこをいじってもいろいろな形で影響が出てくるという、非常に難しい分野です。今、議論されている大きな流れとは、その医療の改革を誰が率先して実行するのかということと、その中で医療費の適正化をどういう基準で求めていくのかということが言われていると思います。

 そのことに関連して、一つ興味深いデータに触れてみたいと思います。日本の高齢者、もう少し正確に言うと後期高齢者の一人当たりの医療費はどれくらいの規模になっているのかを都道府県別に並べてみると、最も...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
半導体から見る明日の世界(1)世界的な半導体不足と日本の可能性
なぜ世界の半導体不足は起きた?台湾TSMCと日本復活への鍵
島田晴雄
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮