テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

なぜ「書」の勢いを、油絵具やアクリル絵具で出せるのか

勢いと余白(4)エネルギーの根源とは

概要・テキスト
「書」は勢いで書けるが、油絵具やアクリル絵具は、勢いで描けるように作られていない。だが、コシノジュンコ氏の絵には、書と同じ勢いがある。それは、なぜなのだろうか。また、コシノジュンコ氏は何でも面白がり、やりだすとやめられないというが、それはまさに、コシノ氏の母と同じである。コシノ氏の母は「やればできる」という信念を持っていた。そして人が好きで、誰からも好かれていた。エネルギーの元は、「人のためにいろいろやってあげる」ところにあった。母がモデルになった朝ドラ『カーネーション』というタイトルは、まことにピッタリな命名であったことも分かる。(全11話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:27
収録日:2022/10/06
追加日:2023/01/06
カテゴリー:
≪全文≫

●絵具で書と同じ勢いを出せるのは、やはり天才


―― コシノさんはいろいろな画家の絵をご覧になるときに、どのようなインスピレーションを受けられるのでしょう。たとえば戸嶋靖昌さんの絵を見たときに受け取るのは、どのようなものですか。

コシノ それぞれ違いますから。違いがいいのであって、共通点はないと思います。一見似ているようで、似ていないです。みんなそれぞれ育ってきた過程や思いなど、いろいろと複雑なものが、全て一つの絵に集約されているわけです。その人の人生ですから。戸嶋なんて、全く「人生」ですよね。

執行 もう「人生そのもの」です。

コシノ 「人生そのもの」だと思うんですね。「この方の生きざまは、こうだったのか」みたいな絵だと思います。そうではないのですかね。

執行 それはコシノさんの絵も同じです。

コシノ だから、全く違うと思うのです。違うから魅力があるんじゃないでしょうか。

執行 コシノジュンコの絵は、油絵だと山口長男が合うのです。山口長男以外だと、書が合うのです。太い、勢いで書いた書が。ただ、書の場合は勢いで書けますが、同じ勢いで絵具で描ける人はいません。

コシノ 私の絵で、あれは書ですね、どちらかというと。

執行 はい、あれですね。

コシノ 文字ではないですが、書です。おそらく。

執行 あれとそっくりな書が、山岡鉄舟です。日本で最も有能な武士です。

コシノ あれを言葉にできたらもっといいのですが、言葉が出てこないので、ぜひつけてください(笑)。

執行 あれは山岡鉄舟の「龍」という字に近いです。

コシノ そう言われると、龍に見えてくるし。

執行 天に昇る龍です。

コシノ 昇り龍ですね。昇ってますね。そうですね。龍は大好きです(笑)。

執行 特に、ここに来たらすごいです。

コシノ そう、生かされました。色といい、ピッタリです。

執行 ここが好きで好きでたまらない、という雰囲気があります(笑)。

コシノ もう、ここに落ち着きました(笑)。

執行 すごいなあ。

コシノ これは書ですね。

執行 書というものは、勢いで書けるようになっているんです。墨も。ところが絵具は、勢いで描けるように作られていません。アクリルも油も全部、ちゃんと重ねて塗るように構造的に作られているんです。だから油やアクリルといった絵具を使って、書と同...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。