勢いと余白
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影の構成Ⅱ…優れた作品は断片でも優れている
勢いと余白(10)作品を味わう…影の構成Ⅱ
考察と随想
コシノジュンコ氏の作品「影の構成Ⅱ」を鑑賞する。この作品は、「重さ」の中にある「自由さ」を感じる作品である。黒と白のバランスが絶妙だが、コシノ氏は陰と陽の「太極」のあり方を意識しているという。常に二つで、一つで埋め尽くすと、つまらない。足し算があれば引き算があるように、二つを一つとしてバランスが取れていくのである。また、戸嶋靖昌が「優れた芸術とは欠片でも優れている」という言葉を残したが、「影の構成Ⅱ」も側面の一部だけを切り取っても、一つの芸術作品になっている。(全11話中第10話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分33秒
収録日:2022年10月6日
追加日:2023年2月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●「重さ」の中にある「自由さ」


執行 これは、コシノ芸術の「影の構成Ⅱ」と言われる作品です。私はこれを一目見たとき、コシノさんの全ての力がこもっている、宇宙エネルギーが貫徹しているコシノ芸術の代表作だと思いました。それで無理に無理を言って、譲っていただいたのです。

 今の銀河系宇宙ができている根本は、重力宇宙と言われるものです。お互いの星が引き合う重力の力が、宇宙のエネルギーやわれわれの生命エネルギーを出しているのです。それを最も分かりやすく、コシノさんの生命を叩きつけて表した代表作の一つだと思っています。
 
 見た感じとしては、ものすごく「重い」です。ところがこの「重さ」の中にある「軽さ」というと変な表現になりますが、「重さ」の中にある「自由さ」をすごく感じたんです。

 特に黒と白のバランスです。このバランスと打ち込みの角度が、重さと自由度を交錯させている。天才性が出ている作品だと思います。

 これほどの作品について一番気になることを直接コシノさんとお話しできるわけですが、これだけの「重力」と「自由」を同時に表現するにあたり、芸術家としてどのように描いたのでしょう。

コシノ 私は、「太極論」というものがありましてね、二つのものが一つになる。その二つとは、右手と左手です、人間で言うと。右利きの場合、左手があるから右がよく動く。このバランスが取れていることを太極論と言っています。すべて二つだと思っています。

執行 陰と陽ということですか?

コシノ 陰と陽とですね。1日でたとえるなら昼と夜、人間の体でいうと右と左であったり、上と下であったり、常に二つだと思うんです。一つで埋め尽くすと、つまらない。足し算があれば引き算があるみたいに、完成度とは一つではなく、二つを一つとしてバランスが取れていく。だから足し算と引き算のバランスかもしれない、と。

執行 黒と白のバランスの取り方が絶妙というか、これ以上はないという角度で取れていると思います。

コシノ 黒のスペースは広いですよね。でも小さいところに一番インパクトがある。これを埋め尽くしてしまうと、すごく重たい。そのバランスです。

執行 やはりその辺は考えているのですか。

コシノ 私の好きな生き方は、これです。埋め尽くすのではなく、どうやって引き算するかが大切かなと。

執行 これだけのバランス...