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一直線…コシノ芸術の「生命的自由」と「重力」の代表例

勢いと余白(11)作品を味わう…一直線

概要・テキスト
「一直線」もコシノ芸術の典型の一つである。暗黒の中を1本の「金」が垂直に流れている。これは、宇宙の生命エネルギーの「垂直軸」の流れを表している。この作品をコシノジュンコ氏は、那智の滝を「日本の一番の象徴」と言ったアンドレ・マルローの気持ちで描いたという。執行はこの作品を最初に見たときに国宝「那智瀧図」を抽象化したものと思ったが、コシノ氏にもそうした思いがあったのだ。「那智瀧図」の魂を、将来に向けた抽象画として描けるのがコシノ氏であり、だからコシノ芸術は「未来の芸術」なのである。(全11話中第11話)
時間:07:12
収録日:2022/10/06
追加日:2023/02/24
カテゴリー:
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≪全文≫

●「垂直の金」が生命エネルギーを表している


執行 これも最初に見た瞬間に感激したんです。これはコシノ芸術の典型的な一つです。同じ趣旨で作られているものは多いですが、これが一番分かりやすい。

 宇宙エネルギーの流れというか、私が「垂直軸」と言っている、われわれが生命エネルギーとして宇宙から受けている、われわれが生きるための根源の力があります。その根源の力を人間は、物理的にも太陽光線を中心として宇宙から受けている。われわれ生命は、地軸から来る生命エネルギーで生きているのです。

 それを、コシノ芸術は絵具で芸術作品として表している。その中の一つの代表例ということです。
 
これは一番分かりやすい暗黒流体です。私は宇宙エネルギーを負のエネルギーだと思っています。その負のエネルギーは「暗黒流体」と物理学では呼ばれています。この暗黒流体の中に、これだけの1つの金の流れを作れること自体が「勇気」だと思うのです。

 簡単そうに見えますが、暗黒流体の中を、何の変哲もないというと失礼ですが、金をここまで延ばせる。細工なしで延ばせるということが、コシノさんが生命エネルギーの本体を把握していることの証明の一つになるのです。

 コシノ芸術論の中でも、ちょっと書きましたが、文学では、生命エネルギーは滝の流れでよく表されます。滝の流れが、垂直に落ちるもの。これはごく当たり前で、われわれが見てこれが一番分かりやすい。それから地軸から噴出してくる、天に噴き上げる滝、そういう作品も、コシノ作品ではたくさんあります。

 あとは垂直軸に流れる滝が横に振れて、地球を横断する横のラインです。縦横に噴出していく。また垂直に行く。水平に上がっていく。そういうものもあるのですが、これは代表的な「垂直に下がっていくエネルギー」が、一番分かりやすい作品だと思っています。
 
 ほかのコシノ作品を見るときの根源になる作品で、この垂直軸の金がコシノジュンコの持つ感性によって、広がったり狭まったり、横に流れたりしていく。その流れがコシノさんが持つ生命的自由なのです。

 これはコシノ作品を見るための一つの基準や基本になる作品で、そういう意味で、すごく価値がある。ぜひ皆さんにも見ていただきたい、ということです。


●那智の滝、そして「那智瀧図」の感激と抽象化


執行 これを描くとき、どういう気持ちだった...
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