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妄想が過激化…ハインリッヒ13世の陰謀とSNS社会の危険

ハインリッヒ13世の事件…他人事ではない陰謀論の恐怖

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
2022年12月、ドイツでハインリッヒ13世の事件が起こった。これは、古い貴族の出身者であるハインリッヒ13世が中心人物の極右グループが政府転覆を企てて逮捕されるという事件だが、グループの実態を調べると、インターネットを介して陰謀論を共有し、連帯を広げるQアノンのような活動に強く影響を受けていることが分かった。この事件は、日本にとってけっして対岸の火事ではない。情報が拡散され、テロ行為が容易に大規模化、過激化し得るSNS社会の危険を考える。 ※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:44
収録日:2023/03/31
追加日:2023/05/14
≪全文≫

●ハインリッヒ13世の事件――ドラマのようなクーデター未遂の背景


―― 皆様、こんにちは。本日は曽根泰教先生に、ハインリッヒ13世の事件についてお話を伺いたいと思います。

 ハインリッヒ13世の事件と聞いても、今このタイミングですと、「何だっけ」と思う方も多いと思うのですが、これはどういう事件でしたか。

曽根 日本でも報道されたのですが、2022年12月7日、(ドイツの)チューリンゲン州で政府転覆を企てたグループを逮捕した事件です。

 ドイツ検察が逮捕したのですが、中心人物がハインリッヒ13世という古い貴族の出身者でした。それから、右翼の元議員を司法相にするということで、さらに軍人や元警官などが重武装して企画された、一種の大陰謀のような計画です。(AfD:ドイツの政党「ドイツのための選択肢」の)マルザックウィンケマンという元連邦議員で現在ベルリンの判事をしている人なども中心人物です。

 ただし背景を見ると、やはりQアノンが関係しており、また、「ライヒスビュルガー」といいますか、昔からの「帝国の市民」という意識を持った人たちが絡んでいた。そういう事件だったといわれているのですが、こんなことがなぜ起こったのかというのがまず1つです。

 もう1つは、これは漫画かドラマのような話だということです。どうしてそう思ったかというと、BBCのドラマの中に「サマー・オブ・ロケット」という、何回かのシリーズのドラマがあるのです。

 その中で最終回のころに、元貴族が元軍人たちと現職議員を糾合して、そして戦車まで用意してロンドンを襲おうという話があります。その集まりで、ロンドン空港、放送局、それから証券街を襲わなければいけないという話をしているときに、実は情報が漏れる。情報が漏れて、BBCのテレビで風刺劇をやっている。その風刺劇をやっているのをこの首謀者たちが見て、ばれてしまったということで、これ(ロンドン襲撃計画)を中止する。そういう話があったのです。この話にすごく似ているなと思います。

 つまり、ハインリッヒ13世の事件の骨子は、このドラマのような話ではないかと。場所はドイツとイギリスで違うのですが、もう何年も前にイギリスのBBCで流された話がここで出てくるというのは、「漫画ですよね」「ドラマで...
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