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中大兄皇子、織田信長、吉田松陰――いつも変革は若者から

驀直去~まっしぐらに突き抜けろ(2)若者たちに対する檄文

行徳哲男
日本BE研究所 所長
情報・テキスト
蒙古襲来時、「驀直去(まくじきこ)」の教えを悟り、国難に立ち向かったのは17歳の北条時宗。しかし今、敢然と国難に立ち向かう指導者が少なすぎると憂慮する行徳哲男氏。驀直去に込められた想いを檄文にぶつけ、若者たちに提示する。
時間:11:15
収録日:2014/02/26
追加日:2015/07/09
≪全文≫

●言い訳は一切許されないのが驀直去という教え


行徳 やはりわれわれ現代人というのは、よけ癖が付きすぎています。何かあればよけて通ります。よけるときに、われわれは頭だけ磨いていますから、必ずよける言い訳をつくっているわけです。

 人間というのは、やはり言い訳の、〝excuse〟の動物です。しかも、頭だけ磨いていますから、言い訳の仕方が実に巧みです。それでも、言い訳をしていることが分かれば、まだ救われます。しかし、現代人は、言い訳をしていることが分からないくらい巧妙な言い訳をするため、ますます自分が見えなくなっています。人間以外の生き物は言い訳しません。だから、われわれの山の中では言い訳は一切許されません。言い訳したら鉄拳を食らうのです。それが驀直去(まくじきこ)という教えです。

―― 先生、無学祖元もやはりモンゴルに追われて日本にきたのですか。

行徳 両親が虐殺されているわけです。大変な苦しみの中から、ある意味では追われるようにして日本に来ました。だから、彼自身の負った大きな傷というものが、その国難に時宗を若者として真正面から立ち向かわせたのです。

 あの蒙古の襲撃でいえば、例えば河野通有です。火矢をあびせて、船にぶつかっていきました。「神風」は、そのときに吹いた風で、そこから、その名が出てきたわけです。やはり鎌倉武士、侍は強かったのです。

―― リーダーが腹をくくれば、やはり鎌倉武士は立ち上がりますよね。ものすごく数が劣っていても、抵抗するからそのうちに神風が吹くわけですね。抵抗しなかったら、あのようにはならないですね。

行徳 だから、やはり神様が見放さなかったのです。

―― やはり意志があったからですね。


●葛藤忌避が感性を鈍らせる要素の一つ


行徳 そうですね。たった17歳の若者があれだけの国難に立ち向かったのです。しかも見事にこれを防いだわけです。あの世界の強大国・蒙古を迎え撃ったことから、ある意味ではその後に蒙古の中で内紛が起きて滅びていったわけです。私がこういうことを若者たちに話すと、ある意味では大変に元気づいてくれます。

 だから、言い訳というのは、結局忌避なのです。葛藤忌避です。これが感性を鈍らせる要素の一つです。

 松下政経塾のそれこそ大先輩の神蔵先生を前にして言うのも何ですが、私は政経塾に一番欠けているものの一つに、葛藤忌避者が多すぎるということがあると思います。全部きれい事でやりすごしています。もめ事をよけています。しかも、よけるとき、やっぱり巧みな言い訳があります。

 私は、〝less conflict〟が〝more productivity〟ではないと思います。〝more conflict〟が〝more productivity〟です。葛藤を忌避しすぎています。だから、日韓問題、日中問題が皆こじれるのは、葛藤忌避者が日本の政治家の中に多すぎるからです。

 なぜ敢然と立ち向かわないのか。そうしたら、向こうだって、日本に対して、逆に好意を持ってくれるはずです。何か妙なへつらいとか、妙な卑下があったりする。言わせれば、卑下というのは傲慢の裏返しです。傲慢な人間ほど、やたらとへりくだります。卑下傲慢です。

―― 同じなのですね。

行徳 本当に卑下と傲慢は裏腹です。だから、今の政治家たちを見ていますと、選挙の前は皆、米つきバッタです。もうペコペコペコペコして、もみ手できます。バッチをはめた途端にふんぞり返ります。あれはまさに卑下傲慢な一つの人種ですね。


●真正面から突き抜けようとする政治家、指導者が少なすぎる


―― でも、そういう意味で、北条時宗はすごい人なのですね。

行徳 それだけに、NHKで大河ドラマ「時宗」をやったとき、私はNHKに抗議したのです。それは、無学祖元を出さなかったからです。筒井康隆さんという作家の方もNHKに対して抗議をしました。そして、最後に少しだけ無学祖元を新たにシナリオに入れてくれたのです。それと、時宗はミスキャストです。時宗役をやった若者を、私は知っています。能か何かをやる方ですが、あれはミスキャストです。

―― でも、壁に頭を打ち付けて悟ったという話はすごいですね。

行徳 それぐらい行き詰ったのです。だから、キェルケゴールの生きざまといい、時宗の生きざまといい、そのものに浸りきって突き抜けるという驀直去の教えにおいて、人間にとって最高の生きざまです。

 例えば、別子銅山で起きた住友の労働争議のとき、伊庭貞剛という方は労働争議の真っ只中、荒れ狂う労働者の中をたった一人で乗り込んでいくのですから、すごいです。伊庭貞剛のおじさんが広瀬宰平さんです。広瀬宰平さんと伊庭貞剛さんの二人が住友中興の祖だと思います。あの方たちがいなかったら、今の住友はありませ...
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