断熱から考える一年中快適で健康な住環境
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
増える熱中症による救急搬送…日本の建物の「4つの弱点」
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(2)日本の夏の暑さと建物の弱点
前真之(東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 准教授/博士(工学))
夏の暑さが年々厳しくなっている日本だが、100年前と比べると特に東京の場合、真夏日が2倍以上の90日、つまり3カ月続くというデータが出ている。中でも注意すべきは熱中症で、室内の高温化によって救急搬送されるケースが増えている。また、最近増えているのが「教室が夏に暑いので、生徒たちがかわいそうだ」という学校からの問い合わせである。実際に調査して分かったのは、非常に不健康で危険な校舎の現状である。どういうことなのか。今回は、日本全国に広がる夏の暑さの状況をデータで確認した上で、日本の建物の弱点ともいえる基本性能の問題点を解説する。(全6話中第2話)
時間:13分00秒
収録日:2024年6月20日
追加日:2024年8月18日
≪全文≫

●データで分かる日本の夏の酷暑化


 日本は、決して冬が暖かい国ではないということを認識していただいたわけです。今度は夏の暑さについて見ていきたいと思います。年々、夏の暑さが厳しくなっているということは、皆さんも感じていらっしゃると思います。ここでは1920年代、およそ100年前から2023年にかけて、どれだけ暑さが厳しくなったかを気象庁のデータから見てみたいと思います。

 まずこちらは、年間の中で最高の気温がどのようになったかということを、那覇、福岡、前橋、東京、仙台、盛岡、札幌で比較したものになっています。赤い線の東京を見ていただきますと、1920年代、100年前は年間で最高気温が34.8度であったものが、2023年には37.7度になりましたので、3度上がっているということになるのです。

 ただ、3度上がったといわれても、いまいちピンと来ないという方も多いと思いますので、次に、暑い日がどれだけ発生していたかという日数で見てみたいと思います。

 まず、1日の最高気温が30度を超える日を「真夏日」といいます。この真夏日を見てみますと、那覇は別格で、昔から非常に真夏日が多いということになるのです。赤い線の東京を見ていただきますと、1920年は年間40日ぐらいだったものが、2023年には90日です。だから、100年前は1カ月ちょっとくらいかというところですが、今は丸々3カ月です。夏の間は連日のように真夏日になるということで、はっきりと暑い日が増えているということが分かるわけです。

 また、仙台、盛岡、札幌のように比較的寒冷であった地域も、2000年頃まで真夏日は20日を超えていないかなというくらいだったものが、2023年には一気に増えているということです。仙台、盛岡でも、66日、58日ということですから、2カ月丸々真夏日です。札幌でも30日で、1カ月分真夏日が来るということです。寒冷な地域はあまり冷房をしていない地域が多いわけですけれど、本当に気をつけなければいけないのです。夏の暑さが日本全体で厳しくなっていることが分かります。

 次に、さらに暑い日です。日最高気温が35度を超える日を「猛暑日」というわけですけれど、こちらはもう日本全国で、1980年までほ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治