『タテ社会の人間関係』と文明論
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
武士の誇りにも影響…中世のヨコ社会から近世のタテ社会へ
『タテ社会の人間関係』と文明論(4)ヨコ社会からタテ社会への転換
江戸時代以前の日本社会では「ヨコ型」の要素も多く存在しており、象徴的な言葉として中世の日本にあった「兼参」を紹介する呉座氏。兼参とは複数の主君に仕えることで、つまり中世ではリスクヘッジとして複数の集団に属することがあったのだが、戦国時代から江戸時代にかけて社会が統一されると、「場」が重要視されるようになる。その結果、日本社会はルールよりも人間関係を重視するようになるのだが、エモーショナルな一体感が場を支配するようになる。今回の講義ではその背景について議論を深めていく。(全8話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分43秒
収録日:2024年5月27日
追加日:2024年8月29日
≪全文≫

●象徴的な「兼参」、日本の中世は「ヨコ型」に優位性があった


與那覇 江戸の前の中世とかですと、例えば中根さんのこのタテ社会なのか、ヨコ社会なのかという図式でいくと、どのような感じになりますか。

呉座 これはやはり私が歴史学者として一番気になるところで、これは『教養としての文明論』でも議論したところですけれど、いわゆる日本的なタテ社会、分かりやすくいうとムラ社会的なものというのが、いつからあったのかということですね。

 中根さんなどの人類学的な観点からすると、どうしても日本は昔からそうでしたという感じになってしまうのですけれど、歴史学の観点からいうと、はたしてそのタテ社会みたいなものが昔から日本はそうだったのかというと、江戸時代からそうだという気もしますが、その江戸時代よりさらに遡った中世段階でタテ社会になっていたかというのは、やはりかなり疑問がありますね。

 中世の場合、象徴的な言葉として「兼参(けんざん)」という言葉があります。

與那覇 ケンザンというのはどういう字ですか。

呉座 兼ねるに参るという字です。

與那覇 なるほど。分かります。

呉座 ですから、つまり複数の主君に仕えるということで、まさに複数の「場」にいるということがあったわけですね、中世においては。

與那覇 それは確か(『タテ社会の人間関係』)66ページで中根さんは、要するに複数の団体に属することで、いわばリスクヘッジするということですね。

呉座 そうですね、リスクヘッジするということです。

與那覇 こういうのを中根さんは、中国人的複線所属、(つまり)複数のラインに所属するといっていますが、実はイギリス人もイタリア人も中国人のように複数の集団に所属してリスクヘッジしていると。日本人だけがしなくて、かつ、複数の集団に属していると、「おまえは裏切り者なのか」とか「向こうに色気があるんじゃないか」というように排除するのですが、それは日本だけですといっているわけですけれど、昔は結構日本人でもやっていたと。

呉座 昔はやっていたのですね。

與那覇 なるほど。

呉座 分かりやすい例でいうと、一番有名な例では明智光秀がそうです。明智光秀というのは、将軍足利義昭に仕えていて、さらに織田信長にも仕えていました。ただ、足利義昭と信長の仲が悪くな...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
「心から幸せになるためのメカニズム」を学ぶ(1)心理学研究と日本の幸福度
実は今、「幸せにも気をつける」べき時代になっている
前野隆司
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(2)戦争省とチャーリー・カーク暗殺事件
チャーリー・カーク暗殺事件とは?その真相と政権への影響
東秀敏
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏