●「誰もやってないからこそ」目指したい猛烈な意欲
―― 今回は、【大谷翔平の不可能を可能にする力】です。
桑原 これはもう、今まで申し上げてきたような話です。
―― そうですね。普通に考えると、本当に不可能だと思うことばかりをやってきた方です。
―― まず1番目が、「誰もやったことがないと言われてますけど、誰もやってないからこそ、やってるんですから」と。
桑原 これは大谷選手の原点ですね。だから、次の言葉もちょっと一緒にしてしまいますが、花巻東高校で菊池雄星選手の世代がもし優勝していたら、自分は花巻東高には行かなかったと言っているように、「岩手で優勝したい」という思いはあるわけです。岩手で優勝したいのだけれど、花巻東高ではないということです。
(自分が)いつもやろうとしているのは誰もやってないことであり、無理だといわれることが自分の意欲をかき立てる。これは日本の企業では一番見られない話かもしれません。「みんながやっているからやってしまう」という人が多い中で、「人がやったことがない」とか「初めて」ということに対して猛烈な意欲が湧いてくるという人だと思います。
―― ちょっと冒険家的ですよね。
桑原 そうですね。起業家でいえばベンチャーキャピタル、それこそスティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのような、「えっ、火星へ行く?馬鹿じゃないか」ということをやってみたいという発想です。
―― そうですね。次の「160キロを目指していたら、158キロぐらいで終わっちゃう可能性があるので、目標数値は高めにしました」というのは、先ほどお話があったことですね。
桑原 そうですね。これは花巻東高の佐々木監督も、途中でそういうふうに考えて、目標を上げさせようとした。それを大谷に言ったら、大谷が「その数字は僕、もう自分で張ってます」と言われてびっくりしたといいます。なぜそこまで考えられるのか。高校1年生の16歳ですよ。「160キロを目指したら駄目だから、163にする」というのは16歳の子にはない発想です。それが、できる。どこで学んだかは分からないけれど、それができてしまう。「そうしないと、できない」と思える思考力が天性のものなら、すごいですよね。
―― そうですねえ。監督から高いノルマを課せられて、いやだなと思うより前に、自分でそこを目指すと...