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戦後70年「安倍談話」はどのような内容になるのか?

どうなる?戦後70年「安倍談話」(1)村山談話をどこまで踏襲するのか

若宮啓文
元朝日新聞主筆
情報・テキスト
2015年は戦後70年の節目の年。来る8月に発表される安倍晋三首相の談話に今から注目が集まっている。果たして「安倍談話」はどのような内容になり、歴代内閣の立場をどの程度まで継承するつもりなのか。『戦後70年 保守のアジア観』の著者・若宮啓文氏(元朝日新聞主筆)が語る。(全5話中第1話目)
時間:08:28
収録日:2015/01/29
追加日:2015/02/25
カテゴリー:
≪全文≫

●歴代内閣の立場を全体として継承する


―― 去年(2014年)の暮れに、前作を大幅に改訂されて、『戦後70年 保守のアジア観』を発刊されました。私はもう、これを1冊読めば、戦後70年の日本とアジアの動きや、一部戦前までも含めて分かるようになると思いました。多分、今回が2回目の改訂だと思うのですが、改訂というよりも、新しい本を出されたという感じですね。この正月にじっくりと読ませていただき、非常に楽しませていただきました。

若宮 ありがとうございました。

―― 私の友人のジェラルド・カーティスさんも、この本を非常に高く評価されていました。アメリカにはちょうど今日帰ったと思いますけれども。今日は、若宮さんに来ていただき、これから発表される「安倍談話」や、戦後70年の日本とアジアの軌跡、このあたりのお話をぜひ聞かせていただければと思います。

若宮 ありがとうございます。今おっしゃっていただいたように、神蔵さんは前の本をしっかり読んでくださっているから、変化も分かると思うのですが、全部で20年越しの作なのです。今回もそれなりに蓄積と、新しく変わっている部分があるし、今まで気付かなかったようなことも含めて、集大成にしたつもりです。そこを、まさに戦後70年のタイミングで出版することができたので、お役に立てればありがたいです。

 それでは始めますが、戦後70年で安倍談話がどうなるかということが、昨今、一つの注目の的になっています。これは、国内だけではなく、中国や韓国をはじめ、アジア、それからアメリカも非常に気にしているという状況です。

 少しご説明しますと、安倍晋三さんは、今年になって、正月の5日に伊勢参りをして、そこで記者会見をして、戦後70年の安倍談話はどうなるのか、という質問に答えています。

 「村山談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいく。戦後70年の節目を迎え、安倍政権として先の大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後、アジア太平洋地域や世界のために、さらにどのような貢献を果たしていくのか、世界に発信できるようなものを考え、新たな談話に書き込んでいきたい」

 このようにおっしゃったと報じられています。

 村山談話を全体として継承するということは以前からおっしゃっていたのですが、自ら「村山談話」という名詞も使い、それを含めて「歴代内閣の立場を全体として引き継いでいく」ということですから、それを一応、中国も韓国も好意的に受け止めて、「そういうことなら結構だから、ちゃんとしたものをお願いしますよ」というような反応だったのです。それから、異例のことですが、アメリカもこれを「歓迎する」という反応を政府から出したのです。ですので、これはいいことではないかなと思っていたのです。


●謝罪の総決算「村山談話」の文言は必ずしも使わない


若宮 ただ、ついせんだってのNHKの番組で、安倍さんが各党の代表からそのようなことを聞かれ、「全体として引き継いでいく」ということについて答えているのですが、村山談話のエッセンスの中にあるキーワードは「侵略」と「植民地支配」と「謝罪」なのです。「では、その言葉をもう1回使うのか」と聞かれたら、「いや、そういうことではない」と、はっきりと否定したのです。

 「どの談話のどの部分を使う、使わない、という細々した話になるとよくない」と安倍さんが言うと、「細々とした話とは何ぞや」などと各党の代表が言って、また話を蒸し返したような形になってしまったのです。安倍さんなりに今、これをどういうものにするか、悩んでいるのだろうと思うのです。

 皆さんご存じかとは思いますが、村山談話とは、戦後50年である1995年に、村山富市さんという日本社会党の党首が、自民党と新党さきがけとの連立内閣で総理大臣の公式談話として発表したものです。ですから、閣議も経て出したものですが、その肝心のコアの部分を読んでみます。

 「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に過ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます」

 このような文言です。いわば、アジアに対する謝罪の総決算として、ワーディングは「謝罪」ではなく「お詫び」という言葉でしたけれども、「痛切な反省」と「心からのお詫び」がセットになったわけです。

 これを安倍さんは「全体として継承する」と言っています。...
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