人生と仕事観
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仕事には「意味」が不可欠だが、数字は「意味」にならない
人生と仕事観(6)数字は「意味」にならない
考察と随想
対談 | 執行草舟田村潤
フランスのワイン会社の序列は、売上げでは決まらない。ワイン通と認められた50人ほどが決める。つまり評価基準は質が重要であって、売上げだけではないのだ。一方、アメリカングローバリズムは、売上げだけを見るような社会である。だが、アメリカングローバリズムは開拓時代に生まれたもので、開拓するものがない現在は別の概念を作る必要がある。そこでキリンビールの使命に戻ると、「日本人に最高のビールを届けて、喜んでもらうこと」。つまり、「量」は関係なく、目指すのは「質」である。「質」で幸せにすることができるなら、人口減少も関係なく、同時に世界を相手にすることもできる。(全10話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:9分31秒
収録日:2025年7月4日
追加日:2025年10月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●数字万能主義はもう「無理」でしかない


執行 フランスのワイン会社の序列がありますね。フランスのワインの会社は古くから名門がたくさんありますが、あれらは売上げで決めていません。フランスのワインの名門は全部、売上高なんて公表もしていないし、知りもしません。興味もない。では何か。有名な話ですが、「認められている人」(からの評価)です。

 ワイン通として、フランス社会で「この人はワインがわかる」と認められている人が、例えば30人とか50人いる。その人たちが何を一番うまいと言っているかなのです。だから「うまい」「まずい」を勝手に決めてはダメです。ワイン通として選ばれた50人が、「今年のこのワインは、ここのものが一番うまい」とか「まずい」とか言って評価される。だから、評価基準は売上げだけではないのです。

 ところが、日本は本当に今、売上げしかない。売上げでその企業や商品を判断している限り、無限経済成長の今のアメリカングローバリズムから逃れられません。売上げが下がったら、落ちこぼれになるのですから。

 今の日本社会は、売上げで落ちこぼれたのです。でも、もっと違う価値が日本にあるということを私は見いだしているのです。そこに気がつかなければいけない時期だということです。

田村 今の若い人たちの話を聞くと、仕事に「意味」を与えないと、会社を辞めてしまうのです。数字は「意味」にならないのです。その意味とは「どれだけ役に立っているか」です。「そこに自分が貢献できるのか」。そこへ向かわないとダメで、数字万能主義はもう無理です。

執行 もうダメだと思います。

田村 それと数字を上げようと思っても、上がらない時代です。

執行 だって飽和ですから。アメリカングローバリズムはアメリカが大陸を開拓した時代の話です。無限の荒野で、物を作れば作るほどいくらでも売れた。それでアメリカ大陸を100年で開拓したのです。

 日本なんて、こんな小さな列島を開拓するのに2000年かかっています。フランスも日本も2000年かけて開拓したのに、アメリカ大陸は100年でやった。鉄なら鉄の生産も、作れば作るほど足らなくて、作っても作っても足らないという時代が20世紀初頭まで続いた。

 そのときにできたのが、アメリカングローバリズムという経済常識です。それがすごく発展した。だから、われわれ日本もヨーロッパも幻惑され...