中東を理解するために
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「中東」とは何か?~3つの手がかりから深める理解
中東を理解するために
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
2011年の「アラブの春」以後、いまだに厳しい内戦やテロが続く中東情勢だが、そもそも「中東とは何か」「イスラムとは何か」など複雑で分からないという声も多い。中東秩序の変化と歴史的背景、そして西洋大国やロシアとの関係に注目しながら、中東を理解するための重要なポイントを日本の中東研究の第一人者・山内昌之氏がわかりやすく解説する。
時間:17分30秒
収録日:2014年2月5日
追加日:2014年2月24日
≪全文≫

●「アラブの春」は「アラブの冬」になったのか


 こんにちは。山内昌之です。

 2011年から「アラブの春」が始まりました。「アラブの春」は、圧制者や独裁者によって長いこと虐げられていたアラブの人々が、ついに立ち上がり、チュニジア、そしてリビア、エジプト、さらにイエメンといった地域や国の為政者たちを倒すことに成功し、現在はシリアにおいて、その影響が引き続き続いています。

 しかしながら、“「アラブの春」はどこへ行ったのか”ということをよく聞きます。“「アラブの春」は、「アラブの冬」になったのではないか”とも言われています。今のシリアの内戦の厳しさを見ていても、そして、終わったかに見えたイラクにおいても、そのような傾向があり、まだ西イラクを中心にしてシリアにまたがる形で、厳しい内戦やテロが続いています。

 こういう中で、「アラブの春」は、全体として2011年から2013年末ぐらいまでで、推定8000億ドルという損害を出したと言われています。インフラの破壊や、あるいは人々の家屋やビルの崩壊等々を含めて、そうした損害を出したという試算が出されていますが、実際の損害額はそれ以上かと思われます。一番劇的なのは、今のシリアの経済の破壊であり、紛争は今や3年から4年に及ぼうとしています。

 13万人の死者が出て、数十万人が負傷し、現在、ジュネーブで政府側と反政府側を中心にした関係者の協議を続けられていますが、そこでも焦点になっているのは、人道的危機という問題です。そもそもシリアの人口の半分が家を失い、200万人の難民が外国に出ています。近隣の国々に出ていますから、これは必然的に、近隣のイラク、ヨルダン、レバノン、さらにトルコといった国々の、治安や政治的な安定を不安定にする原因にもなっています。

 今年2014年の見通しとしましては、今申したような国々を含めて、シリア、エジプト、イラク、ヨルダン、レバノン、そしてトルコにおいて、1600万人の人々が人道支援を必要とされると見込まれています。これは、中東の世界、アラブ、トルコ、イランを中心にして成立している中東の世界が、近代の歴史において経験した一番厳しい状況であり、今求められているのは国際的な人道的支援であることは、言うまでもありません。


●「何が何だか分からない」複雑で難解な中東やイスラム


 こういった点を踏まえて考えてみますと、「中東と...

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