近代中国哲学と西洋哲学
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「シンパシー」に規範の根拠を求めた清朝考証学の泰斗
近代中国哲学と西洋哲学(2)清朝考証学・戴震の思想
中島隆博(東京大学東洋文化研究所教授)
性善説の「性善」には、味と同じような仕組みがある。清朝考証学の泰斗と呼ばれた戴震はそう主張した。それは一体どのようなことなのか。東京大学東洋文化研究所教授・中島隆博氏が洋の東西を渡り歩くシリーズ「近代中国哲学と西洋哲学」第2回。
時間:21分55秒
収録日:2014年12月19日
追加日:2015年6月29日
≪全文≫

●清朝考証学の泰斗、戴震を取り上げる


 皆さん、こんにちは。今回は、明の思想が提出した問題に、次の清の時代がどう答えたか、その一端を見ていきたいと思います。今回取り上げるのは戴震(たいしん)という思想家です。彼は、清朝考証学の巨人、泰斗と呼ばれています。

 清朝考証学と聞いて、どう思われますか。考証学なので、詳細な文献学ではないか、あるいは、実証的な学問ではないかという意見もあるでしょう。もう一つ、ある種の注釈の学ではないかといった考え方もあろうかと思います。どれも考証学をある面から言い当てていますが、考証学は清朝という異民族王朝に花開いた一つの学問的な態度だったのだろうと私は考えています。

 もちろん、考証学に携わった学者はたくさんいて、それぞれ違いがありますから、十把一絡げに扱うような乱暴なことはあまりしない方がよいのですが、しかし、ここで一つの鍵になるのは、考証学が目指したのはある種の現実に接近する態度だったということです。


●漢唐訓詁の学、朱子学・陽明学の先にある


 ここで少しだけ、中国の注釈の学についてご説明します。よく「漢唐訓詁の学」と言われますが、漢とは漢の時代で、唐は唐の時代です。漢代と唐代に訓詁の学、つまり、注釈学が花開いたとしばしば言われるのです。

 どういうことかと申しますと、まず漢の時代は、その前の諸子百家が華やかだった時代に成立した、経書を含むさまざまな文献に注釈を施しました。単純に意味が分からないので説明を補った場合もありましたし、複数の経書の間にあるさまざまな齟齬や矛盾を解釈によって乗り越え、整合的な世界観をつくり上げようという努力も見られました。その結果、漢代の注釈によって中国思想の宇宙の一つが成立していったのです。これは、帝国としての漢にふさわしい事業だったと思います。

 その後、唐の時代にもう一つのピークが来ます。唐は世界帝国でしたから、その規模に見合った世界観、宇宙観を目指して、今度は漢の注釈に加え、六朝時代の仏教解釈学の手法も導入して、さらに壮大な体系をつくり上げたのです。それが中国の学問の大きな骨格を成していきました。

 先日お話しした朱子学の朱熹がチャレンジしたのは、そういった以前の中国の学問でもありました。彼は、全く新しい注釈を書くという、途方もない、ほぼ気が狂ったような企てを行ったのです。い...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
学びとは何か、教養とは何か
教養の基本は「世界史」と「古典」
本村凌二
「アフォーダンス」心理学~環境に意味がある(1)アフォーダンスとは何か-1
トップアスリートが語る究極の「アフォーダンス」とは
佐々木正人
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(9)「トランプ大統領」の視点・論点
【テンミニッツで考える】「トランプ大統領」をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(7)若者の引きこもりと日本の教育問題
日本の引きこもりの深い根源…「核家族」構造の問題とは?
與那覇潤
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
「同盟の真髄」と日米関係の行方(7)トランプ氏の評価とその実像
こりごり?アイ・ラブ・トランプ?…トランプ陣営の実状は
杉山晋輔
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(14)ポリスと魂の堕落過程〈下〉僭主の末路
僭主制は欲望の奴隷…過度の自由が過度の隷属に転換する
納富信留
『貞観政要』を読む(2)著作に登場する人物たち
房玄齢・杜如晦・魏徴・王珪―太宗の四人の優れた側近
田口佳史
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(2)“変わり者”の生かし方と後継者選び
「人材の組み合わせ」こそ「尖った才能」を輝かせる必勝法
水野道訓
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己