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地震の専門家が語る地震対策の「最大の敵」とは?
日本では世界平均の約10倍の地震が起きるという事実
地震大国・日本。あまりありがたい呼称ではありませんが、世界の地震の約10パーセントが日本付近で起きているという事実と、日本の面積は地球の表面積の1パーセント程度という事実の2つを掛け合わせると、「日本では世界平均の約10倍の地震が起こる」という計算になってしまうということも、また事実です。こうした現実が避けられないのなら、まず地震のことをよく知ることから始めるべきではないでしょうか。
4つのプレートと2つの地震のタイプ
地震のメカニズムに詳しい東京大学地震研究所教授の纐纈一起氏によると、地震は地表を覆う岩盤(プレート)がそれぞれ動いて境目で衝突することによって起こります。日本付近には太平洋、フィリピン海、ユーラシア、オホーツクと4つものプレートが存在するので、結果的に日本は地震の多い国になってしまうわけです。日本付近で起きる地震は2つのタイプに分けられます。いわゆる海の地震と陸の地震です。海の地震は「プレート境界地震」と呼ばれ、境界の断層が一気にずれることで起きるため、マグニチュード8~9レベルの大規模地震になることが多いのだそうです。かつ、震源が浅い場合は津波を引き起こします。津波と聞いてお分かりのように、東日本大震災はこのタイプでした。
一方、陸の地震は「地殻内地震」と呼ばれ、岩盤のひずみが地殻内の活断層で解放されて起きる地震のことです。記憶に新しいところでは、2016年の熊本地震がこのタイプになります。海の地震に比べれば規模は小さく頻度もさほど多くはないのですが、起きる場所によっては直下型地震として甚大な被害を及ぼすことになり、1995年の阪神・淡路大震災はまさにその典型例でした。
東日本大震災の恐ろしさを物語るいくつかの特徴
纐纈氏は、「3.11」として私たちの記憶に刻まれた東日本大震災にはいくつかの特徴があると言います。まず、それは超巨大と言っていい海の地震であり、マグニチュード9を記録したことです。また、津波の被害が甚大であったことに比べて、揺れによる被害は限定的であったという特徴を持ちます。そして、本震後の余震が多く、東北以外にも大きな誘発地震を引き起こしました。この「地震は一度では収まらない」という点に、多くの人が恐怖感を抱いているのではないでしょうか。東日本大震災でも、本震直後に大きな余震が続き、人々を眠れない日々に陥れたばかりでなく、震災から6年経過した2017年においてさえ、震度5クラスの余震が起こっているといいます。
最大の特徴、そして盲点は「想定外」
しかし、纐纈氏が将来の地震対策のためにも心しておかなければならない最重要ポイントとして挙げるのは、東日本大震災の規模が「想定外」であったということです。もともとの長期評価では、三陸沖北部、宮城県沖、福島県沖など6つの小領域で、それぞれ独立した地震が起こるという予測がされていました。ところが、実際には6つの領域が同時に活動して超ド級の地震となったのです。この現象は、当時の政府の地震調査委員会の委員長をして「複数の領域が連動したのは想定外であり、地震研究の限界」と言わしめました。
「想定外を想定する」が防災の鉄則
日本が領域内に大きな4つのプレートを有していること。そのプレートの運動に伴って日本列島にひずみがたまるということ。こうした現象は変えることはできません。それに、現実的には、どんなに長期のデータを綿密に分析して評価、予測をしても、自然はいつも人間の一枚上手をいく、いつも「想定外」の余地を残しているということです。こうした現実を変えられないのならば、一人一人、できる限りの地震対策をした上で、「想定外があることを想定する」という心がまえを持つことが、防災の鉄則といえるのではないでしょうか。
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