テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.11.19

ブラック企業対策として労働者が行うべきこととは?

 長時間労働や残業代の未払い、表向きと異なる勤務時間、そこから起こる過労死や過労自殺などなど、仕事をめぐる問題や事件が続々と話題にあがる昨今。メディアが問題提起を行い、政府の働きかけも続いていますが、自分の身は自分で守るという意志も必要です。

 とはいえ「労働基準法ってなんだっけ……?」と言いたくなるほど、長時間労働を強いられている方も多いことと思います。あまりそうはなりたくありませんが、劣悪な労働環境下で体を壊してしまったり、精神を病んでしまうという事例が増えています。

 そんないざという時、ブラック企業から身を守り、労災認定を受けるため、個人にできることはあるのでしょうか?

勤務時間とはどんな時間のこと?

 何より重要なのは、日常から勤務時間の記録をつけておくことです。過労で病気になった際の労災認定や、未払い賃金の支払いを求める際、労働時間の記録は重要な証拠となります。しかし、そもそも勤務時間とはどんな時間のことでしょう?

 これまでの判例で勤務時間は「使用者の指揮命令下にある時間」と定義されています。使用者とは雇用者のことです。例えば勤務時間に含まれるのは着替え時間です。対して、勤務時間にはならないものには、通勤時間や前泊は勤務外となります。昼休みや休憩時間も勤務時間ではありません。しかし受付や電話番など、任されている仕事があれば、それは勤務時間内となります。あくまで、仕事から完全に離れられる時間が休憩時間なのです。

勤務時間を証明するための方法

 勤務時間の条件をご説明したところで、次に記録方法です。労災認定や、会社との裁判になった場合、有力な証拠となるのはタイムカードです。各月ごとにカードは更新されますが、その都度コピーをとったり、スマホで写真を撮るなどして手元に残しましょう。

 しかし、残業時間を偽るために勤務時間内にもかかわらずタイムカードを押させるという会社も存在します。そうした場合、タイムカードは事実と異なる記載がなされていることになります。この場合、有効なのがメールの送受信記録や会社の入退館記録、シフト表のコピーなどです。実際に、仕事をしていた時間が分かるものが手元にあれば、勤務状況を示すことができるからです。

 また、意外なところで有効なのがブログやSNSへの投稿です。社内にいることがわかる風景と、時計を一緒に撮影した写真をアップすることで、日付と時間を証拠とすることができます。

 その他には、残業時間を記録するアプリも配信されています。実際に行われた未払い賃金を請求する裁判でも、こうしたアプリの利用履歴やブログの投稿が決め手となり、企業側に支払いが命じられたという判例があるのです。

身を守るために知識を得る

 日本国憲法の定めた国民の義務のひとつは「労働」です。「働かざる者、食うべからず」などと言いますが、労働をしなければ賃金を得ることができません。生活のため、将来に抱く不安のため、ときにはわらにもすがる気持ちで、劣悪な労働環境に身を投じてしまうこともあるかもしれません。

 仕方ない、耐えなければ、と思う方も多いかもしれませんが、法律では1週40時間以上の労働は違法です。例えば、法定労働時間を超えて働かせることができる「36協定」を結んでいても、この協定の有効期限は1年間という有効期限があります。あの手この手で残業代を支払うことを拒否する企業も存在しますが、おかしいなと思った場合は条件を鵜呑みにせず、調べてみることも必要です。

 また、あまりに劣悪な職場環境が続くようならば、専門の弁護士に相談したり、悪質であれば労働基準監督署に違法行為の是正申告を行うなど、行動を起こすこともできます。

 体や心の病気は、時に一生の付き合になってしまうこともあります。紛争に発展するようなことは避けたいですが、いざという時のため、身を守るための知識を得ておきましょう。

<参考サイト>
・ブラック企業被害対策弁護団
http://black-taisaku-bengodan.jp
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

繁華街・新宿のルーツ、江戸時代の遊女が働く飯盛旅籠とは

繁華街・新宿のルーツ、江戸時代の遊女が働く飯盛旅籠とは

『江戸名所図会』で歩く東京~内藤新宿(2)「夜の街」新宿の原点

歌舞伎町を筆頭に、東京でも有数の繁華街を持つ新宿だが、その礎は江戸時代の内藤新宿にあった。遊女が働く飯盛旅籠(めしもりはたご)によって、安価に遊興できる庶民の「夜の街」として栄えた内藤新宿の様子を、『江戸名所図...
収録日:2024/02/19
追加日:2024/04/28
堀口茉純
歴史作家
2

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教

ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このよ...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/03/26
橋爪大三郎
社会学者
3

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(3)電力の部分最適と全体最適

サステナブルな電力の供給と消費が求められる現代社会。太陽光発電のように電力の生産拠点が多元化する中で、それぞれの電力需給と国全体の電力需給のバランス調整が喫緊の課題となっている。実はヨーロッパなどの「再エネ比率...
収録日:2024/02/07
追加日:2024/04/27
岡本浩
東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者
4

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(4)サウジアラビアとイランの存在感

中東のグローバル・サウスといえば、サウジアラビアとイランである。両国ともに世界的な産油国であり、世界の政治・経済に大きな存在感を示している。ただし、石油を武器にアメリカとの関係を深めてきたのがサウジアラビアであ...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/24
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス

「重要思考」で考え、伝え、聴き、そして会話・議論する――三谷宏治氏が著書『一瞬で大切なことを伝える技術』の中で提唱した「重要思考」は、大事な論理思考の一つである。近年、「ロジカルシンキング」の重要性が叫ばれるよう...
収録日:2023/10/06
追加日:2024/01/24
三谷宏治
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授