テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.01.06

40歳からの転職が伸びている!?「35歳転職限界説」のウソ・ホント

 転職をするなら35歳まで、いわゆる「35歳転職限界説」。転職業界で長い間語られてきた定説だが、果たしてその実態はどうなのか。統計をひも解いてみると意外な事実が浮かび上がってきた。

 転職サイト「DODA」が2015年2月に発表した「転職成功者の年齢調査」によると、2007年7月から2014年12月までの7年半の期間で最も割合が増加しているのは驚くなかれ、40歳以上なのだ。2007年下期を「1」とした場合、24歳以下が「0.6」、25~29歳は「0.9」、30~34歳は「1.1」、35~39歳は「2.1」、そして40歳以上がなんと「5.4」となっている。限界を超えているかと思われていた35歳以上、中でも40歳以上の転職が飛躍的に伸びていることがわかる。

 その理由として「DODA」は、

・ 金融危機後の業績回復や新規参入、大型投資をするために、スピーディーに成果を出せる人材が必要になっている

・ 商材投入や組織改編のサイクルが短縮化され、未経験の人材をじっくり育てるのではなく、「即戦力」を中途採用している

・ 顧客ニーズの多様化に対応するため、営業など、技術や専門職種系など特定スキルが必要な職種以外でも、ミドル層の経験やスキルが求められるようになっている

 などを挙げている。つまり、知識や経験を持った即戦力の人材に対する需要が高まっているのがここ最近の転職市場の傾向と言えるだろう。

 逆に言うと、未経験であったり、過去の経験が生かしづらい業界への転職となると、やはり35歳以上になると門が狭くなっていくという現状はある。2007年の雇用対策法改正により、求人票で年齢制限をかけることは原則として禁止になったが、いくつか例外となるケースがある。例えば「長期勤務によるキャリア形成を図る観点から、若年等を期間の定めのない募集・採用する場合」だ。長期的なキャリア形成のため、正社員として若者を雇用する場合は年齢制限をかけることも許されている。転職サイトで見かける「35歳以下の方(長期キャリア形成のため)」といったフレーズはそれに当たる。

 また、労働者の平均年齢が上がっているということも「35歳転職限界説」の定説が覆されつつある要因と言えるだろう。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、2014年の一般労働者の平均年齢は42.1歳だが、10年前の2004年は40.4歳。10年で1.7歳上昇したことになる。

 上述した「DODA」の「転職成功者の年齢調査」では転職成功者の平均年齢についても統計を取っており、2007年下期の平均が29.1歳だったのに対し、7年間ずっと右肩上がりで2014年下期は32歳にまで上昇している。

 35歳が限界なんてことはない、ただし即戦力に限る。重要なのは年齢ではなく能力ということになる。転職しようかどうか悩んでいるミドル層、将来に不安を感じ転職も視野にある若手層は、年齢的なタイムリミットを気にするよりも、自分の「市場価値」を高めることを第一に考えてみよう。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

驚愕的インフレを克服したブラジルの奇跡と強さの秘密

驚愕的インフレを克服したブラジルの奇跡と強さの秘密

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(5)多民族国家ブラジルの強さ

グローバル・サウスで注目される6カ国の最後はブラジルである。南米最大の多民族国家として、文化やスポーツなどさまざまな面で注目を集めており、世界の中でもその開放的な国民性には関心が高い。しかし、政治では腐敗やスキャ...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/05/01
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
2

地政学を理解する上で大事な「3つの柱」とは

地政学を理解する上で大事な「3つの柱」とは

地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か

国際政治を地理の観点からひも解く「地政学」という学問。近年、耳にすることも多くなった分野だが、どのような手法や意義を持った学問であるかを学ぶ機会は少ない。その基礎から学ぶことのできる今回のシリーズ。まず第1話では...
収録日:2024/03/27
追加日:2024/04/30
小原雅博
東京大学名誉教授
3

皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか

皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか

天皇のあり方と近代日本(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室

日本の歴史のなかで、天皇や皇室の姿は大きく移り変わってきた。日本が第二次世界大戦に負けた後、戦後日本的な象徴天皇の姿が確立されていったが、今、その「戦後の皇室像」の変化が求められているのではないか。その問題意識...
収録日:2021/11/02
追加日:2021/12/16
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授
4

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教

ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このよ...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/03/26
橋爪大三郎
社会学者
5

石田梅岩が唱えた「商売の基本」、不足の共有化が鍵

石田梅岩が唱えた「商売の基本」、不足の共有化が鍵

石田梅岩の心学に学ぶ(4)商売の基本と梅岩教学

石田梅岩の大きなテーマである「商売の基本」はどこにあるか。それは「不足」についての認識を共有化することだと田口氏は言う。20年の探究が実を結び、石田梅岩が講席を開いたのは1729年。以後、講席は15年続くが、本人の講義...
収録日:2022/06/28
追加日:2024/04/29
田口佳史
東洋思想研究家