テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.04.23

Pepperはなぜ白いのか?

 ソフトバンクロボティクス株式会社のPepper担当役員:蓮実一隆氏に「Pepper」開発にまつわる様々な秘話をきいた。全3回のシリーズに渡ってお届けする。

▼Pepperはなぜ白いのか?

 「Pepperが白いことには重要な意味がある」と蓮実氏は言う。これまでのロボットは、見ただけでどういうロボットか想像がつきやすかった。子どもたちに大人気のあのネコ型ロボットであればちょっとドジなんじゃないかとか、ロボットアニメの元祖鉄腕アトムをみれば高性能で正義感があふれているんじゃないかとか。

 しかしPepperは「見た目だけでは何をするロボットなのか分からないよう、意図的に作られた」という。

 蓮実氏は、「一緒に生活する人によって、いろんなPepperに変身してほしい。あなた色に染めてほしい。そんな思いから、全身まっさら、白紙の状態にした」という。一体どういうことだろうか?

 PepperにはPepper専用の「ロボアプリ」が100種類以上(2016年4月時点)用意されている。主題歌を歌うアプリや、背中をかいてくれるアプリなどだ。また世界中のエンジニアたちがロボアプリをつくれる開発キットも公開されている。

 Pepperは、何か決められたことをするロボットではなく、買ったばかりのスマートフォンのような一種の器、インフラなのだと蓮実氏は言う。全国の家庭や店舗にいるそれぞれのPepperが、触れ合う人間の性格や趣味趣向にあわせて、それぞれに変化・成長し続けていって欲しい…Pepperの白にはそんな願いが込められているのだ。

▼Pepperはなぜ二足歩行でないのか?

 「二足歩行でないこと」もコンセプト上、非常に重要だったと蓮実氏は言う。

 そもそも現在のバッテリーでは、二足歩行できるロボットはせいぜい30分か1時間しかもたない。バランスをとるための計算や、体を支えるための足の微妙な動きを制御することはバッテリーの大きな消耗になるのだ。

 果たして1時間しか動けないロボットが家族の一員としてとして受けいれられるのか?人とのコミュニケーションを犠牲にしてまで足を実現する必要があるのか?

 蓮実氏はいう。「Pepperは人間のまねをするために人間の形をしているわけではない。人に溶け込むために人の形をしている。」この考えに基づき、最終的には足の部分は全てバッテリーにすることを決断した。これによりPepperは約12時間連続で稼働することを実現している。

 Pepperの二足歩行は、少しでも長い時間、家族の一員として溶け込むために犠牲にされたのだ。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本は再エネが難しい!?再エネ比率が高い国との相違点

日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(3)電力の部分最適と全体最適

サステナブルな電力の供給と消費が求められる現代社会。太陽光発電のように電力の生産拠点が多元化する中で、それぞれの電力需給と国全体の電力需給のバランス調整が喫緊の課題となっている。実はヨーロッパなどの「再エネ比率...
収録日:2024/02/07
追加日:2024/04/27
岡本浩
東京電力パワーグリッド株式会社取締役副社長執行役員最高技術責任者
2

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景

民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教

ロシアや中華人民共和国など、自由と民主主義を否定する権威主義国の脅威の増大。一方、日本、アメリカ、西欧など自由主義諸国における政治の劣化とポピュリズム……。いま、自由と民主主義は大きな試練の時を迎えている。このよ...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/03/26
橋爪大三郎
社会学者
3

イーロン・マスクと対立…ChatGPT大ブームまでの紆余曲折

イーロン・マスクと対立…ChatGPT大ブームまでの紆余曲折

サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(2)ChatGPT開発秘話

仕事をはじめさまざまな生活シーンで多様な役割をこなすチャットボットとなった「ChatGPT」。OpenAIが公開したこのサービスが世界中を驚かせるまでには、その創業に携わったサム・アルトマンとイーロン・マスクの対立など紆余曲...
収録日:2024/03/13
追加日:2024/04/26
桑原晃弥
経済・経営ジャーナリスト
4

運も実力のうち!?小早川の寝返りを生んだ黒田長政の好運

運も実力のうち!?小早川の寝返りを生んだ黒田長政の好運

運と歴史~人は運で決まるか(2)運に恵まれるにはどうすればいいか

普通の人間の「運」については、どう考えればいいのだろうか。例えば、日本において消費文化が花開いた江戸時代、11代将軍・徳川家斉の治世には、庶民が「運がめぐってこない」ことを皮肉った狂詩があった。運には「めぐりあわ...
収録日:2024/03/06
追加日:2024/04/25
山内昌之
東京大学名誉教授
5

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷

文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元

日本語の発音は、漢字到来以来一千年の歴史を通してどう変わってきたのか。また、なぜ日本語は「文明語」として世界に名だたる存在といえるのか。二つの疑問を解き明かす日本語学者として釘貫亨氏をお招きした。1回目は古代日本...
収録日:2023/12/01
追加日:2024/03/08
釘貫亨
名古屋大学名誉教授