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愛煙家 VS 嫌煙家…タバコをめぐる賛否両論
日本における「禁煙」問題は、アメリカの「トランプ政権」、イギリスの「BREXIT」、イタリアの「憲法改正」のように国論を二分するのでしょうか?「情報戦」とも言われるほど行き交う賛否両論について、調べてみました。
『北の国から』などの脚本家・倉本聰氏書き下ろしのオリジナル脚本のもと、石坂浩二をはじめ、浅丘ルリ子、有馬稲子、加賀まりこ、五月みどり、八千草薫、藤竜也、ミッキー・カーチス、山本圭などの豪華きわまるベテラン俳優が集結。大人の見るドラマが少ない昨今、注目度は上々で、昼間時間帯としては異例の高視聴率をマークしています。
このドラマの見どころは、現実にテレビ界を支えてきた名優たちが名前や役どころは違えども、ほぼ「本人」役を演じるので、現実の二重写しが楽しめるところ。主演の石坂浩二と浅丘ルリ子が長く夫婦だったことは有名ですが、「なんとか鑑定団」などの名前も飛び出して、クスッとさせます。そんな中に、小さな爆弾として仕込まれているのが毎回の喫煙シーンです。
主人公は、息子から「タバコを減らしたら」と勧められると、「俺とタバコの付き合いはお前との付き合いよりもよっぽど長い」と切り返す愛煙家。「俺がお前を育てられたのも、タバコが作品を書かせてくれたから。タバコが身体に悪いことくらい人に言われなくてもわかっている」「俺にとって一番身体に悪いのは、『禁煙』とそこら中に書かれた文字だ!」と、いわゆる逆ギレ状態になるセリフは、世の愛煙家を代弁したものでしょう。
かつてのドラマや映画では、タバコの煙がセリフの代わりを務めることも多く、さまざまなアイディアの母胎となった紫煙立ちのぼる会議室など、過去の日本の姿を踏みにじる風潮が、倉本氏は許せないのでしょうか。
「苦言があります」に始まる要望書では、映画が「タバコ広告・宣伝の禁止」という条約から外れていることを指摘しています。さまざまなシーンで喫煙が描かれ、特に学生が「タバコくれ」と友人にタバコをもらう場面が未成年者の喫煙を助長すると訴えました。
ジブリからの返事はありませんでしたが、「喫煙文化研究会」(代表すぎやまこういち)が“反論”を買って出ました。映画の舞台となる昭和10年代のデータはないものの、1950年代には男性の84.5%が喫煙していたので、当時の状況を再現するには一般的描写であること、憲法第21条で「表現の自由」が明確に認められていることを述べたFAXは、「自国の国民同士がいがみ合うことなく、喫煙者と非喫煙者が共生できる『分煙社会』を実現するべきと考えます」と結ばれていました。
タバコを描写することとタバコの宣伝は、まったく別物。現在放映中の『やすらぎの郷』で毎回喫煙シーンが挟まれるのも、この経緯を踏まえてのことかもしれません。
厚生労働省の研究班は、2016年5月31日の世界禁煙デーに「受動喫煙が原因で死亡する人が国内では年間約1万5千人に上る」との推計結果を発表して世論を震え上がらせました。この数字は職場や家庭での受動喫煙の割合や、受動喫煙と因果関係があるとされる肺がんや脳卒中など4つの病気の死亡統計などから推計したものだといいます。平成28年の死亡数推計が129万6千人ですから、毎年1.15%の人が受動喫煙が原因で死亡していることになります。
さらに、禁煙推進派は現状の「分煙」には効果がないと強力に主張しています。確認できる根拠は二つだけで、一つは五輪を機にレストランやバーを分煙にしたスペインであまり改善が見られなかったこと。日本国内では、新幹線の喫煙ルームから漏れ出す煙や有害物質の量が測定されて、無煙空間と思われている新幹線内が「動く受動喫煙空間」であるとの指摘です。ただ、新幹線の喫煙ルームの構造や使用頻度は、ビル内の喫煙室とは比較にならないでしょう。
「屋内禁煙」のみならず、「屋外禁煙」についても「実施しないと整合性が取れない」と日本禁煙学会の作田学理事長は主張しています。しかし、厚労省がモデルとしているはずのイギリスを始めとするヨーロッパ諸国は、「屋内は禁煙、屋外は喫煙可」がはっきりしている国が主流です。
例えば脳学者の養老孟司氏は、たばこを吸うことは睡眠同様「無秩序を清算する行為」と仮説を立て、「禁煙運動が奏功し、日本人がたばこを吸わなくなれば、もしかしたら無秩序を溜め込んで、心の病になる人も増えるかもしれない」と、日本が融通の利かない社会に変質していくことを嘆いています。
順天堂大学医学部の特任教授である免疫学者の奥村康氏は、「たばこを吸ってもガンにならない」というラット実験のこと、たばこに含まれるニコチンが脳内ネットワークに働きかけて記憶力をよくすること、自殺者に喫煙者が少ないことなどを論じた上で、「こういうことを言うと、今は医学界から放り出される」と閉口。人間の体をウイルス感染から守ったり、がん細胞をつぶしたりする「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」が、タバコを吸うことで増えると「『不良』長寿の勧め」を紹介しています。
作家で女優の高橋陽子氏は「煙草から始まる映画もあった」、作家の筒井康隆氏は「ま、今日も笑って一服…」、すでに物故した女優・淡路恵子さんは「たばこは私の6本目の指」と、それぞれに魅力的なタイトルをつけたエッセイを寄せています。
少なくとも主張の多様性や共感性という点では、タバコ擁護派の主張のほうが読ませるものが多い、とは言えそうです。
倉本聰ドラマ、シルバー世代の煙たい逆襲が始まった
2017年4月3日、“大人の、大人による、大人のための帯ドラマ”として、『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)がスタートしました。『北の国から』などの脚本家・倉本聰氏書き下ろしのオリジナル脚本のもと、石坂浩二をはじめ、浅丘ルリ子、有馬稲子、加賀まりこ、五月みどり、八千草薫、藤竜也、ミッキー・カーチス、山本圭などの豪華きわまるベテラン俳優が集結。大人の見るドラマが少ない昨今、注目度は上々で、昼間時間帯としては異例の高視聴率をマークしています。
このドラマの見どころは、現実にテレビ界を支えてきた名優たちが名前や役どころは違えども、ほぼ「本人」役を演じるので、現実の二重写しが楽しめるところ。主演の石坂浩二と浅丘ルリ子が長く夫婦だったことは有名ですが、「なんとか鑑定団」などの名前も飛び出して、クスッとさせます。そんな中に、小さな爆弾として仕込まれているのが毎回の喫煙シーンです。
主人公は、息子から「タバコを減らしたら」と勧められると、「俺とタバコの付き合いはお前との付き合いよりもよっぽど長い」と切り返す愛煙家。「俺がお前を育てられたのも、タバコが作品を書かせてくれたから。タバコが身体に悪いことくらい人に言われなくてもわかっている」「俺にとって一番身体に悪いのは、『禁煙』とそこら中に書かれた文字だ!」と、いわゆる逆ギレ状態になるセリフは、世の愛煙家を代弁したものでしょう。
かつてのドラマや映画では、タバコの煙がセリフの代わりを務めることも多く、さまざまなアイディアの母胎となった紫煙立ちのぼる会議室など、過去の日本の姿を踏みにじる風潮が、倉本氏は許せないのでしょうか。
映画『風立ちぬ』への抗議で名を馳せた日本禁煙学会
一方、「屋内全面禁煙」のリーダー的存在とも言えるのが、医師や看護師約3600名で構成された一般社団法人「日本禁煙学会」です。この団体が有名になったのは、2013年夏、スタジオジブリが公開した映画『風立ちぬ』に抗議したことからです。当時まだNPO法人だった日本禁煙学会は、アニメ内のタバコの描写に問題があるとして、要望書を送りました。「苦言があります」に始まる要望書では、映画が「タバコ広告・宣伝の禁止」という条約から外れていることを指摘しています。さまざまなシーンで喫煙が描かれ、特に学生が「タバコくれ」と友人にタバコをもらう場面が未成年者の喫煙を助長すると訴えました。
ジブリからの返事はありませんでしたが、「喫煙文化研究会」(代表すぎやまこういち)が“反論”を買って出ました。映画の舞台となる昭和10年代のデータはないものの、1950年代には男性の84.5%が喫煙していたので、当時の状況を再現するには一般的描写であること、憲法第21条で「表現の自由」が明確に認められていることを述べたFAXは、「自国の国民同士がいがみ合うことなく、喫煙者と非喫煙者が共生できる『分煙社会』を実現するべきと考えます」と結ばれていました。
タバコを描写することとタバコの宣伝は、まったく別物。現在放映中の『やすらぎの郷』で毎回喫煙シーンが挟まれるのも、この経緯を踏まえてのことかもしれません。
嫌煙派の主張はどこまでがもっともなのか
さて、厚生労働省案の「屋内全面禁煙」に賛成している団体には、日本禁煙学会だけではなく日本看護協会、全国消費者団体連合会などがあります。推進派の意見ははっきりした一枚岩で、「受動喫煙は身体に悪い」という正論です。厚生労働省の研究班は、2016年5月31日の世界禁煙デーに「受動喫煙が原因で死亡する人が国内では年間約1万5千人に上る」との推計結果を発表して世論を震え上がらせました。この数字は職場や家庭での受動喫煙の割合や、受動喫煙と因果関係があるとされる肺がんや脳卒中など4つの病気の死亡統計などから推計したものだといいます。平成28年の死亡数推計が129万6千人ですから、毎年1.15%の人が受動喫煙が原因で死亡していることになります。
さらに、禁煙推進派は現状の「分煙」には効果がないと強力に主張しています。確認できる根拠は二つだけで、一つは五輪を機にレストランやバーを分煙にしたスペインであまり改善が見られなかったこと。日本国内では、新幹線の喫煙ルームから漏れ出す煙や有害物質の量が測定されて、無煙空間と思われている新幹線内が「動く受動喫煙空間」であるとの指摘です。ただ、新幹線の喫煙ルームの構造や使用頻度は、ビル内の喫煙室とは比較にならないでしょう。
「屋内禁煙」のみならず、「屋外禁煙」についても「実施しないと整合性が取れない」と日本禁煙学会の作田学理事長は主張しています。しかし、厚労省がモデルとしているはずのイギリスを始めとするヨーロッパ諸国は、「屋内は禁煙、屋外は喫煙可」がはっきりしている国が主流です。
愛煙家の主張は多士済々
健康を持ち出されるとぐうの音もでない愛煙家は、どんな論陣を張っているのでしょうか。「喫煙文化研究会」のHP「愛煙家通信」を見ると、「禁煙ファシズムに物申す」と銘打って、様々な寄稿が集められています。例えば脳学者の養老孟司氏は、たばこを吸うことは睡眠同様「無秩序を清算する行為」と仮説を立て、「禁煙運動が奏功し、日本人がたばこを吸わなくなれば、もしかしたら無秩序を溜め込んで、心の病になる人も増えるかもしれない」と、日本が融通の利かない社会に変質していくことを嘆いています。
順天堂大学医学部の特任教授である免疫学者の奥村康氏は、「たばこを吸ってもガンにならない」というラット実験のこと、たばこに含まれるニコチンが脳内ネットワークに働きかけて記憶力をよくすること、自殺者に喫煙者が少ないことなどを論じた上で、「こういうことを言うと、今は医学界から放り出される」と閉口。人間の体をウイルス感染から守ったり、がん細胞をつぶしたりする「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」が、タバコを吸うことで増えると「『不良』長寿の勧め」を紹介しています。
作家で女優の高橋陽子氏は「煙草から始まる映画もあった」、作家の筒井康隆氏は「ま、今日も笑って一服…」、すでに物故した女優・淡路恵子さんは「たばこは私の6本目の指」と、それぞれに魅力的なタイトルをつけたエッセイを寄せています。
少なくとも主張の多様性や共感性という点では、タバコ擁護派の主張のほうが読ませるものが多い、とは言えそうです。
<参考サイト>
・東京五輪に向け「屋内全面禁煙」実施すべきか? タバコ規制の賛否両論
https://news.yahoo.co.jp/feature/276
・日本禁煙学会
http://www.jstc.or.jp/
・愛煙家通信
http://aienka.sakura.ne.jp/about/
・東京五輪に向け「屋内全面禁煙」実施すべきか? タバコ規制の賛否両論
https://news.yahoo.co.jp/feature/276
・日本禁煙学会
http://www.jstc.or.jp/
・愛煙家通信
http://aienka.sakura.ne.jp/about/
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