社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
「少子化」より深刻な「非婚化・晩婚化」問題
「1.57ショック」という言葉を聞いたことはあるでしょうか? 1989年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に生む子どもの推計人数)が、1966年いわゆる丙午の1.58を下回ってしまった現象のことです。
しかし、その後の少子化傾向はとどまることなく、2017年6月の厚生労働省が発表した数値はなんと1.44。この低さもさることながら、政府が出している「希望出生率1.8」とのギャップも気になります。政府の年金や医療費等の社会保障対策の見通しは、この「1.8」の上に成り立っているふしがあり、国民の1人としては心配な限りです。
曽根氏は、その後の少子化傾向の急進、さらにはそのことによる社会負担の増大を危惧して、学生たちに研究を進めるよう指導していたそうですが、しかし、肝心の政府は「非婚化・晩婚化」については、ほぼ無策でした。長期予測による出生率推計を何度も見誤っていたことに加え、3回目のベビーブームの山も来るだろうと楽観視していたようなのです。
ですが、その手前の「非婚・晩婚」については、特に政策として具体的な手が打たれることがありませんでした。ようやく、少子化の原因として非婚化・晩婚化が政策に取り上げられたのは2012年、森まさこ氏が少子化対策担当大臣に任命されてからのことだったのです。「1.57ショック」から20年以上が経過していました。この対策の遅れは、生涯未婚率の急上昇にも表れており、男性の5人に1人、女性の9人に1人が未婚のまま50歳を迎えているというのが現状です。
また、特に先進国の都市部では、お金さえ払えば衣食住のほとんどのサービスを手にすることができるという事実があります。デリバリーサービスなどを利用して美味しく栄養バランスのとれた食事を味わうこともできますし、留守の間にロボットが掃除を済ませてくれたり、下着一枚から洗濯して届けてくれるサービスさえあるといいますから、夫婦、親子関係に気をつかうより気軽な独身生活を続けたい、という人が増えても無理からぬことと言えるでしょう。
曽根氏は、政策としては今まで少子化対策としてはタブー扱いだった婚外子や移民受け入れといった問題の対策も迫られているとしており、また、それと同様に、各分野での手厚い研究が必要と指摘しています。さらに加えるならば、「結婚しない」人だけでなく、「結婚したがらない」人に対する研究、対策も急務かもしれません。
しかし、その後の少子化傾向はとどまることなく、2017年6月の厚生労働省が発表した数値はなんと1.44。この低さもさることながら、政府が出している「希望出生率1.8」とのギャップも気になります。政府の年金や医療費等の社会保障対策の見通しは、この「1.8」の上に成り立っているふしがあり、国民の1人としては心配な限りです。
来るはずのものが来ない! 3回目のベビーブーム
政治学者で慶應義塾大学大学院教授・曽根泰教氏は、この1.57ショックの頃には、「第三次ベビーブームの山がない」ということに気づいていたそうです。日本では、1973~74年あたりで第二次ベビーブーム、つまり、団塊ジュニア世代が結婚、出産のピークを迎えました。しかし、団塊ジュニアの子どもたちの世代には、このピーク、山が見られなかったのです。それは、結婚、出産の年齢が広く分散してしまったことが原因でした。曽根氏は、その後の少子化傾向の急進、さらにはそのことによる社会負担の増大を危惧して、学生たちに研究を進めるよう指導していたそうですが、しかし、肝心の政府は「非婚化・晩婚化」については、ほぼ無策でした。長期予測による出生率推計を何度も見誤っていたことに加え、3回目のベビーブームの山も来るだろうと楽観視していたようなのです。
大きな痛手は非婚化・晩婚化対策の遅れ
しかし、第三次ベビーブームは起きませんでした。この幻に終わった現象の根本には、「非婚化・晩婚化」という、「少子化」より手前の問題が潜んでいます。しかし、政府が具体策として講じてきたのは、(十分とは言えないにせよ)男女共同参画、待機児童対策といった、既に結婚、出産、子育てを経験している人たちに対するものです。ちなみに、既に結婚している人たちが何人の子どもを生み、育てるかという点では、かなり安定的に2.0を超えた数字で推移しており、少子化に深刻な影響を与えるほどのものではありません。ですが、その手前の「非婚・晩婚」については、特に政策として具体的な手が打たれることがありませんでした。ようやく、少子化の原因として非婚化・晩婚化が政策に取り上げられたのは2012年、森まさこ氏が少子化対策担当大臣に任命されてからのことだったのです。「1.57ショック」から20年以上が経過していました。この対策の遅れは、生涯未婚率の急上昇にも表れており、男性の5人に1人、女性の9人に1人が未婚のまま50歳を迎えているというのが現状です。
「結婚したがらない症候群」にどう対応するか?
ただし、こうした非婚化・晩婚化傾向に具体的に「手を打つ」といっても、これは制度や環境を整える以前の問題にかかわってくるもの。つまり、個々人の精神面にかかわる部分が大きいので、なかなか事態はややこしいわけです。また、特に先進国の都市部では、お金さえ払えば衣食住のほとんどのサービスを手にすることができるという事実があります。デリバリーサービスなどを利用して美味しく栄養バランスのとれた食事を味わうこともできますし、留守の間にロボットが掃除を済ませてくれたり、下着一枚から洗濯して届けてくれるサービスさえあるといいますから、夫婦、親子関係に気をつかうより気軽な独身生活を続けたい、という人が増えても無理からぬことと言えるでしょう。
曽根氏は、政策としては今まで少子化対策としてはタブー扱いだった婚外子や移民受け入れといった問題の対策も迫られているとしており、また、それと同様に、各分野での手厚い研究が必要と指摘しています。さらに加えるならば、「結婚しない」人だけでなく、「結婚したがらない」人に対する研究、対策も急務かもしれません。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
アメリカは一体どうなってしまったのか。今後どうなるのか。重要な同盟国として緊密な関係を結んできた日本にとって、避けては通れない問題である。このシリーズ講義では、ほぼ1世紀にわたるアメリカ近現代史の中で大きな結節点...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/10
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
人間がこの世界を生きていく上で、バイアスは避けられない。しかし、そこに居直って自分を過大評価してしまうと、それは傲慢になる。よって、どんな仕事においてももっとも大切なことは「謙虚さ」だと言う今井氏。ただそれは、...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/16
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
宇宙とは何かを考えるうえで中国の古典である『荘子』・『淮南子(えなんじ)』に由来する「宇宙」という言葉が意味から考えてみたい。続いて、地球から始まり、太陽系、天の川銀河(銀河系)、局所銀河群、超銀河団、そして大...
収録日:2020/08/25
追加日:2020/12/13
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
「歴史を探索していく」とは、どういうことなのだろうか。また、「歴史を活かしていく」とはどういうことなのだろうか。歴史作家の中村彰彦氏に、歴史を探り、活かしていく方法論を、具体的に教えてもらう本講義。第一話は、歴...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/14
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12


