社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
今さら聞けない「IoT」とは?
IOT(モノのインターネット)という言葉を聞く機会が増えました。なんとなく理解しているつもりではいても、人に説明するとなるとなかなか難しいのではないでしょうか。
モノのインターネットは、パソコンやスマホなどの情報通信機器に頼らず、すべての「モノ」が直接インターネットにつながること。ただし、「モノをインターネットにつないで遠隔操作をするだけなら、10~20年前にできていた」と指摘するのが、東洋大学情報連携学部の学部長でYRP(ユビキタス・ネットワーク研究所所長)の坂村健氏です。
あれば便利かもしれないけれど、それほどスマートとも思えないし、「現実と仮想世界のつながり」を実感させるほどの技術ではないような気がします。なぜなのか。モノ同士ではなく、モノとスマホが個別に情報交換しているだけだからです。それでは、まだまだインターネット的とは呼べません。「量が足りないから」ではなく、「つなぎ方」が問題なのですね。
モノをインターネット的につなぐには、そのモノを作ったメーカー(企業)が自社で開発したソースやコードのオープン性が問われます。これは情報元が「家庭」でも「学校」でも「国」でも同じです。閉じたネットワーク内の利益を守ろうとする態度は、「インターネット的」ではないということです。
2015年5月、坂村氏は「ITU(国際電気通信連合)150周年記念賞」を受けた唯一のアジア人として、世界から注目を集めました。これが「ITノーベル賞」と呼べる賞なのは、ITによる社会貢献が評価されたビル・ゲイツ氏とともに受賞した他5人の発明者の顔ぶれを見れば一目瞭然です。
TCP/IPの仕組みを考えたインターネットの発明者ロバート・E.カーン氏、セルラー方式を最初に考えた携帯電話の親マーチン・クーパー氏をはじめ、デジタルテレビのデータ規格でマーク・I.クリボシェフ氏、マルティメディアデータ圧縮方式でトーマス・ウィーガンド氏、そしてオープンな組込みシステム開発環境TRONを確立し、IoTのコンセプトを世界に最初に提示した功績の坂村氏なのです。
「何かをやろうとしたときに誰かの支配を受けるという環境では、なかなかイノベーションは起きません」と坂村氏。「モノのインターネット」がパワーを発揮するには、まだもう少し時間がかかりそうです。
モノのインターネットは、パソコンやスマホなどの情報通信機器に頼らず、すべての「モノ」が直接インターネットにつながること。ただし、「モノをインターネットにつないで遠隔操作をするだけなら、10~20年前にできていた」と指摘するのが、東洋大学情報連携学部の学部長でYRP(ユビキタス・ネットワーク研究所所長)の坂村健氏です。
モノがネットにつながるだけではIOTではない?
坂村氏が「10~20年前にできていた」と言うのは、いわゆる「スマート家電」。スマホのアプリで家電を遠隔操作して、外出先からペットの様子をのぞいてみたり、留守の間にルンバに掃除をさせたりといった機能です。あれば便利かもしれないけれど、それほどスマートとも思えないし、「現実と仮想世界のつながり」を実感させるほどの技術ではないような気がします。なぜなのか。モノ同士ではなく、モノとスマホが個別に情報交換しているだけだからです。それでは、まだまだインターネット的とは呼べません。「量が足りないから」ではなく、「つなぎ方」が問題なのですね。
モノをインターネット的につなぐには、そのモノを作ったメーカー(企業)が自社で開発したソースやコードのオープン性が問われます。これは情報元が「家庭」でも「学校」でも「国」でも同じです。閉じたネットワーク内の利益を守ろうとする態度は、「インターネット的」ではないということです。
ビル・ゲイツと共に「ITU150」を受賞した唯一のアジア人
「インターネットの本質はオープン性にある」と言う坂村氏は、TRON(The Real-time Operating system Nucleus)という組込みシステム用の標準OSを33年前に開発した人としても著名です。表舞台に出ることはないものの、TRON系のシェアは60%、もちろんオープンアーキテクチャとして無償公開され続けています。2015年5月、坂村氏は「ITU(国際電気通信連合)150周年記念賞」を受けた唯一のアジア人として、世界から注目を集めました。これが「ITノーベル賞」と呼べる賞なのは、ITによる社会貢献が評価されたビル・ゲイツ氏とともに受賞した他5人の発明者の顔ぶれを見れば一目瞭然です。
TCP/IPの仕組みを考えたインターネットの発明者ロバート・E.カーン氏、セルラー方式を最初に考えた携帯電話の親マーチン・クーパー氏をはじめ、デジタルテレビのデータ規格でマーク・I.クリボシェフ氏、マルティメディアデータ圧縮方式でトーマス・ウィーガンド氏、そしてオープンな組込みシステム開発環境TRONを確立し、IoTのコンセプトを世界に最初に提示した功績の坂村氏なのです。
IOTのコンセプトを世界に最初に提示
世界で最初に「モノのインターネット」の考え方を提唱したのが日本人で、30年もの歴史があるとは驚きの事実です。少し前まで「IoT=ユビキタス」であり、その前は「どこでもコンピュータ」、さらにさかのぼると「HFDS(超機能分散システム)」だったといえば、納得される方も多いかもしれません。「何かをやろうとしたときに誰かの支配を受けるという環境では、なかなかイノベーションは起きません」と坂村氏。「モノのインターネット」がパワーを発揮するには、まだもう少し時間がかかりそうです。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
民族自決原則とは?多民族国家が抱える難題と矛盾
地政学入門 ヨーロッパ編(6)「ロシア世界」と民族自決原則
「ルスキー・ミール」という言葉で代表される「ロシア世界」――それは、実際の国境にとどまらず、自国語を話す周辺領域の市民をも包括した概念。プーチンはそれを使ってウクライナ侵攻を正当化するが、国家外の自民族の保護を優...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/09
米国史で最も「主権主義者」を体現しているのはトランプか
トランプ2.0と中東(2)保守主義者から主権主義者へ
トランプ2.0の政治手法や姿勢からは、支持者が信じる保守主義の影が薄れている。「自国第一主義」を守るためなら、桁外れの関税も議事堂襲撃も恐れない。むしろ大国仲間としてロシアに接近する風すらうかがえる。見えてくるのは...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/08
問題だらけの閣僚たち…トランプ政権の真の公約とは?
第2次トランプ政権の危険性と本質(5)トランプの政治手法の問題とは?
トランプの経済政策は、文化戦争の手段としての反グローバリズムという軸で理解するしかないが、そのような政策を進めるトランプ政権の政治手法の問題点はなにか。その背景には、陰謀論者が全部入ってしまったような閣僚の問題...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/07
その後の余命が変わる!続けるべき良い生活習慣とは
健診結果から考える健康管理・新5カ条(7)良い生活習慣が健康寿命を延ばす
健康診断の結果に一喜一憂するだけではなく、そのデータを活用し、生活習慣を見直すことが大切である。今回は、内臓脂肪の管理が健康維持に直結する理由や、体重増加と糖尿病リスクの関係、さらには良い生活習慣が寿命に与える...
収録日:2025/01/10
追加日:2025/05/27
健康寿命に大きく影響する骨粗鬆症・歯周病・変形性関節症
老いない骨のつくり方(1)高齢化と骨の病気
東京大学工学系研究科・医学系研究科教授の鄭雄一氏による「老いない骨のつくり方」シリーズ講話。鄭氏はレクチャー冒頭で、「情報に溺れず正しい情報を選択する能力がいかに大切か」と語り、誤った情報は「人生の栄養失調」に...
収録日:2016/09/14
追加日:2016/10/20