●TRONとは家電や自動車に組み込まれるOS
最初に、私の簡単な自己紹介と、IoTというのはどういうものなのかを説明したいと思います。私は1984年から、TRONという組込みシステムと言われるコンピューターの研究を、ずっと続けてきました。TRONとは、The Real‐time Operating system Nucleusの頭文字を取ったものです。
組込みシステムとは、いろいろな機械の中にコンピューターを入れてコントロールしたり、データを取ったりするためのもので、特別なコンピューターのシステムです。現在では、あらゆる機械、例えばテレビや冷蔵庫、トイレや空調機もそうなのですが、そういうものの中にコンピューターが入っており、それがいろいろな機械のコントロールをして制御をしているわけですが、そういう機械の制御をするようなコンピューターシステムの研究を続けてきました。
よく勘違いをしている人がいますが、パソコンやスマートフォンの中に入っているコンピューターと、その機械そのものを制御するためのコンピューターは、メカニズムが少し違います。いろいろな産業用途に使うためには、より応答速度が速く、リアルタイム性という側面に強いシステムにしなければなりません。また最近の機械は、ウエアラブルといって、持ち運びをします。そうすると、低消費電力のものをつくらなければいけません。例えば、家庭の中のように十分な電源が取れる場所以外でも使えるようにするためには、電力をあまり食わないで動くような形態のシステムになっていなければいけません。そういう意味で、TRONはそういうものに注目し、機械の中に組込み、しかもリアルタイム性に非常に強いシステムの研究をしてきました。
●知られざるグローバルスタンダード
実は今、TRONのコンピューターは、もう世界的にいろいろなところで使われています。例えば、自動車のエンジン制御、それから電子楽器やプリンター、デジタルカメラの中などかなりたくさんのもので、TRONは使われています。また携帯電話についても勘違いをしている人がいますが、携帯にはiOSとAndroidしかないわけではありません。実は最近の携帯、あるいはスマホと言われているものの中には、3つぐらいのコンピューターが入っています。
電子メールを打ったりウェブを見たりするのは、かつてはパソコンで昔からやっていた機能です。そういう作業はiOSやAndroidでやりますが...