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トヨタから学んだ重要な戦略要素は「時間」の概念

シリコンバレー物語~IT巨人の実像と今後(6)トヨタ方式に学ぶアメリカ

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
アメリカはトヨタの「カイゼン」や「カンバン」方式に学び、研究を進めてきた。その最初の一歩はトヨタが再生させたGMの工場視察である。彼らはこれをケーススタディとするだけでなく、普遍化し、一般的に通用する理論を導き出す。さらに、それを愚直に推進したのがアマゾンの商法だ。そこには日本経営の進化形があった。(全7話中第6話)
≪全文≫

●GMのフリーモント工場を再生させたトヨタ


 (ボストンコンサルティングが新しい経営理論を構築する)一方、非常に成績のいいトヨタに対しても、アメリカ人は非常に興味がありました。トヨタの生産方式と品質管理が秘訣なのだというふうに、アメリカでは言われ、あちらこちらの工場で、「カイゼン」という取り組みを行いました。アメリカ企業はもともと「ものつくり」にあまり着目していなかったのですが、この辺で少し革命が起きたわけです。

 カリフォルニアにGMのフリーモント工場というところがあり、労働組合が強くてポンコツになりました。私もこのフリーモントを、ほかのたくさんのアメリカ企業とともにずいぶん見学しましたが、在庫をずっと積み上げていて、効率が悪すぎたのです。それを高く売りつけ、儲かったら株式に転換する。それがアメリカの資本主義です。フリーモント工場も、相当ダメな工場だったのです。

 このポンコツ工場が、トヨタがアメリカに進出するときの「人質」のように用いられます。トヨタはしょうがないから使うわけですが、そのときにNUMMI(New United Motor Manufacturing Incorporated)を設立します。

 ボストンコンサルティンググループの三枝氏もここへ勉強に訪れたようですが、実はここにShimada Researchというグループも入りました。トヨタが再生させた工場というので、アメリカはもちろん世界中の学者が門前市をなして見学に来るのです。あまりたくさん来るので、トヨタでは1人3時間を限度に見せており、論文もいろいろ出ていました。

 私はトヨタと非常に親しく、このときは豊田達郎氏が社長でしたが、「島田先生は別格だから、1週間ぐらいずっと来ていいよ」といってもらいました。私は近くのモーテルに泊って、朝から夕方までずっと通い詰め、おそらく何百時間かトヨタを調査しました。


●トヨタの戦略を応用していったアメリカ


 私が何を行ったかというと、トヨタの労働者のインタビューです。1人1時間ぐらいかけて「コンテンツ・アナリシス(内容分析)」してみようと目論んだのです。行くと、労働者にこう言います。「I don’t speak English well. May I take tape? Is it OK?」。そう言うと「Sure」と言って話してくれますが、1時間ぐらい続けて質問していくと、「どちらがアメリカ人か分からない」となる。

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