IoTとは何か~モノのインターネットの本質
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
Xプライズ方式こそがIoT時代にイノベーションを起こす
IoTとは何か~モノのインターネットの本質(9)Xプライズと社会制度が開くIoTの未来
坂村健(YRPユビキタス・ネットワーキング研究所 所長/東京大学名誉教授)
IoT時代に即したTRON開発を進めるYRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長で東洋大学情報連携学部学部長の坂村健氏が強調するのは、イノベーションに必要なインセンティブを高めること、そして技術の進展に合わせた社会制度を設計することの二つだ。イノベーションも安全性も、絶対ではなく確率の問題だという。だからこそ今後は、それを促す仕組みが求められる。(全9話中第9話)
時間:9分59秒
収録日:2016年12月2日
追加日:2017年4月18日
≪全文≫

●Xプライズの始まりは、リンドバーグの無着陸飛行


 最後に、Xプライズに関してお話します。元をたどると、これはアメリカのオルティーグ賞が最初だと言われています。1919年に、ニューヨークのホテル経営者がオルティーグ賞を設立しました。ニューヨークとパリの間で、無着陸の飛行を最初にやった人に賞金を出すというものです。当時のお金で2万5,000ドル、今だったら億に達する額ではないかと思います。こういう挑戦を成し遂げた人に賞金を出すという公募をやりました。

 こういうことをやったため、開発の期間がものすごく短くなりました。みんな戦うわけですから。1927年に、リンドバーグがこの挑戦に勝ち、賞金を手にします。アメリカは、オルティーグ賞の効果が非常に高いことが、その後も評価されています。

 最近だと、こういう方式をXプライズと言います。例えば、DARPAグランド・チャレンジといって、自動走行の自動車で目的地まで早く行けた自動運転走行自動車に賞金を出すとか、あるいは荒野をきちんと歩き回ったロボットに賞金出すなどです。この方式によって成果がたくさん出て、二足走行ロボット自体は日本が最初に作ったものでしたが、その後の実用面ではアメリカにどんどん抜かれる事態になりました。そのきっかけが、このXプライズという方式です。


●Xプライズこそがイノベーションに大きく貢献する


 これは、ターゲティング型ではありません。Xプライズは、何かをやりたい、それに対してプロポーザルを出してくださいというやり方です。プロポーザルを出した人に開発資金を与え、開発してもらうと言っても、イノベーティブなことを高めなければいけない場合、そういうやり方を取ったからといって、絶対に成功する保証はありません。もしかしたら失敗してしまうかもしれない。

 Xプライズ方式の良いところは、成功した人には開発資金を含めた分を賞金として全部を払うことです。これは素晴らしい方法だと、私は思っています。とにかく競争して成果を出す、競争で勝ち抜くというやり方は、アメリカ人の心情にも合うことがあって、大成果を挙げています。

 イノベーティブなことを起こすためにも、こういう方法は日本でも大事だと思います。そこで最近では、いろいろな民間会社の方と一緒に、日本でもこういうことをやろうという運動を起こしました。前回言った東京メトロさんもそうですし、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者
「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味
津崎良典
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
宗教で読み解く世界(1)キリスト教の世界
キリスト教とは?…他の一神教との違いは神様と法律の関係
橋爪大三郎
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政