●オープンデータでIoTは進化する
次にお話ししたいのは、オープンデータについてです。IoTとオープンデータはどう関係するのか。例えば、この部屋にある電気や空調機など全部が、ネットにつながってコントロールできるようになるという場合、精度をより高めていろいろな制御をしようとすると、この部屋はどうなっているのか、というデータが知りたくなってきます。
「この部屋はどういうことになっていて、電気はどこに付いているのか」という情報は、何もダイナミック(動的)にデータを取らなくても、あらかじめこの部屋を設計した時のデータが残っているはずです。そういうものが公開され、しかもただ公開されるだけではなく、コンピューターが読めるような形でデータが入ります。
今ですと、建築の設計をする際には、CAD(computer‐aided design)など、コンピューターを使ってデザインしています。だから、そういうもののデータがオープンになれば、制御精度はさらに上がります。例えば、何かをコントロールする時に、この部屋がどうなっているのか、扉はどこにあるのか、窓はあるのか、それは開くのか閉まるのかといったことが分かるようなデータが公開される。これが非常に良いと言われています。このように、IoTとこのオープンデータとの間には非常に密接な関係があると言われています。
●オープンデータに求められるのは、コンピューターに読み込めること
こうしたオープンデータに対する注目は、いったいどうやって始まったのでしょうか。2009年1月21日、バラク・オバマ前大統領が就任したその日に、「透明性とオープンガバメント」に題するメモランダムが発表されました。これにより、オープン性は民主主義を強め、政府における効率と効果を高めるため、透明性・国民参加・協業の原則に基づき、開かれた政府を作っていくためには、いろいろな情報が公開されていないといけないということになりました。
ところが、ここで重要なことがあります。一口に「公開される」といっても、例えば政府の運営のために情報を公開する必要性は、何もオバマ前大統領が言わなくても、世界中の民主主義の国ではよく言われていることです。政府のやっていることに対して、データの公開を要求するのは当たり前だということで、日本もそういう取り組みをやっています。どうやって公開するかが、このIoT時代、ネット時代では重要な問題です。
簡単に言えば、コンピューターが理解できるような形で、データを公開されないと困るということです。公開するといっても、データが紙に書かれている状態で公開されたのでは、意味がありません。何万ページにも及ぶものが出てきたとしても、誰がそれを読むのか、ということになってしまうからです。また、こうしたデータをコンピューターに入れるとした場合、紙をそのままの形で、イメージで入れる(具体的にはPDFです)ことが考えられますが、これも駄目です。そういう形でコンピューターに入っているものを、オープンデータとは普通言いません。
●オープンデータ化に後れを取る日本
ここで言っているオープンデータとは、コンピューターが可読な形式のデータを言います。コンピューターにとって役に立つデータを入れる、ということが重要なのです。
そのため、米国は2009年に直ちに、データ・ドット・ガブ(data.gov)を立ち上げました。これはネットで検索すれば、米国がどういうデータを公開しているのかがすぐに出てきます。わずか47件でスタートしたのですが、2016年の4月には16万近くのデータになりました。
こうした取り組みに効果があることが分かったので、例えばイギリスや他のヨーロッパ諸国、北欧は直ちに追従しました。日本も実は追従します。2013年のG8オープンデータ憲章です(安倍晋三総理も出席されています)。残念なことに、日本ではほとんど全く報道されませんでしたが、「コミュニケ」といって、先進8カ国はオープンデータを使うことで、少ないコストでイノベーションを起こし、政府自身を改革していくということで合意を得ています。
こういう情報がなぜ日本ではあまり報道されないのか、よく分かりませんが、このオープン性など、ネットが絡んでいるものに関しては、どうしても日本は後れを取っているような気がしてなりません。
日本もdata.gov.jpといった形で、日本政府や内閣官房、内閣府、また総務省などを中心として、オープンデータ化を一生懸命今やり始めています。いろいろなところで、努力がされています。
●政府のオープンデータがもたらすイノベーション
では、政府が公開するデータとIoTにはどう関係があるのか。米国などではいろいろ面白い議論があります。例えば、犯罪データを警察が全て公開します。もちろんこのデータは機械が読める形...