社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2017.12.16

SNSでの上司への悪口は名誉棄損になる?

 かつてのように大きな経済成長が見込めず、国際情勢が不安定化するなかで、社会全体に不安が蔓延しています。ときに不安は怒りに変わり、歯止めがかからなければ、怒りはついに攻撃に転じます。ただし、注意しなければいけないのは、場合によって、攻撃は法的に許されないこともあるという点です。

 さて、ビジネスパーソンは職場で大きなストレスを抱えています。上司に対するイライラが爆発寸前という方も少なくないでしょう。でも、爆発させる前にちょっと深呼吸。衝動的に、軽い気持ちでやったことが処罰されることもあることを覚えておきましょう。

上司への悪口が「名誉毀損」に!?

 どんなに軽い気持ちであっても、上司への悪口をSNSに暴露してやろうと考えている方は要注意。『知らぬは恥だが役に立つ法律知識』(萩谷麻衣子著、小学館)によると、書き方によっては名誉毀損が成立するとのことです。

 名誉毀損とは、他人の社会的評価を低下させる罪なので、内容が本当のことでも、それを言いふらすことで他人の社会的な信用に傷をつけたなら、損害賠償を請求されたり、犯罪に問われたりする可能性があります。つまり、「パワハラで何人も辞めさせている」といったことが、もし本当のことだとしても、社会的評価を下げるとなると、罪に問われる可能性があるということです。

 ただし、「公共性」「公益性」「真実性」という3つの条件を満たせば名誉毀損にはならないとのこと。これがただの暴露と報道の境界線になっているわけですが、この条件を満たすのは簡単ではありません。同書によると、社会を揺るがすような重大な悪事の暴露でないかぎり、訴えられてもいいという覚悟がないのであれば、しないほうがいいでしょうということです。

「義務がない返信を迫る行為」はストーカー

 2017年は私たちの生活に身近な法律が大きく見直されました。代表的なのがおよそ120年ぶりとなった民法の改正です。民法だけではなく、「性犯罪の厳罰化」や「改正ストーカー規制法」の施行など、刑法にも変化がありました。

 ストーカー法は、2016年5月に起こった小金井ストーカー殺人未遂事件がきっかけとなって改正が議論されるようになりました。改正ストーカー法のポイントは、SNSやブログ等に書き込みを行う、いわゆるネットストーカーが法律上のストーカーの定義の対象となったことです。

 冒頭に述べた悪口と同様、ネットへの書き込みは軽い気持ちでおこなってしまう場合もあると思いますが、アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美氏は、たとえば「SNSで返信を迫る行為」「義務がない返信を迫る行為」もストーカーに該当しうるとexciteニュースで述べています。

 SNSの普及によって、便利になった反面、いつの間にか犯罪に巻き込まれる可能性が高まったといえます。SNSには簡単に加害者にも被害者にもなる可能性が潜んでいます。なにごとも事件が起きたあとで「知らなかった」では済まされません。楽しく活用するには、法律を含めたルールをきちんと確認することが大切です。

<参考文献>
・『知らぬは恥だが役に立つ法律知識』(萩谷麻衣子著、小学館)
・exciteニュース:返信強要はストーカー行為になる?SNSきっかけのストーカーを防ぐ方法とは?
https://www.excite.co.jp/News/woman_clm/20170330/Ren_ai_93972.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質

深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質

中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景

チベット、内モンゴル、新疆ウイグルなど、少数民族に対する深刻な人権侵害をめぐって欧米諸国から強い批判を浴びている中国。しかし、こうした人権問題は今に始まったことではない。中華人民共和国建国の経緯と中国共産党の思...
収録日:2021/10/15
追加日:2021/12/24
橋爪大三郎
社会学者 東京科学大学名誉教授 大学院大学至善館教授
2

ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害

ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害

内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害

高度成長のために頑張った日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の評価を得たが、その後の日本企業の凋落、競争力の低下を考えると、その弊害を感じずにはおられない。読書人口が減っている現状をみると、いつのまにか「世界...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/12/01
3

プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性

プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性

プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義

プロジェクトマネジメントが世界的に普及し始めたのは1990年代。ソフトウェア産業の発展とともに拡大を続け、時代のニーズを受けて多くのシーンに定着してきた。今回は、その基本に立ち返り、国際標準をもとに、プロジェクトと...
収録日:2025/09/10
追加日:2025/12/03
大塚有希子
法政大学専門職大学院イノベーションマネジメント研究科准教授
4

質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?

質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?

歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために

歴史上の出来事の本質を知るには、その真贋を見定めなければいけない。そのためにはどうすればいいのか。記述の異なる複数の本がある場合、いかにして真実を見極めるか。また、司馬遼太郎の作品が「歴史事実」として認識されて...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/12/02
5

ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係

ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係

熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か

お酒やコーヒーなど世の中には睡眠に良くないのではないかといわれるものがある。また、現代においては特に、スマホの「ブルーライト」が睡眠には大敵だといわれているが、それらは本当に悪者なのか。一般に良い睡眠を妨げると...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/30
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授