●非常時に強い「厚重」な人として、威厳を養う
「先づ挙動言語より厚重にいたし、威厳を養ふべし。」
これは、才気煥発な人は素晴らしいようだけれども、非常時に必ずしも強いとは言えないという指摘になります。ストライクゾーンが極めて狭く、ピッタリの場所に来てくれないとクリーンヒットの打てない人が多いからです。それに対して、ストライクゾーンが広く、あらゆる状態に応用できるのが、この「厚重な人」です。
「厚重」とは何が厚く、何が重いのかというと、精神基盤の整備ができていて、何が起ころうと慌てず、沈着冷静を保てることを指しています。「沈着冷静」の反対が、「茫然自失」です。自分を失ったように茫然自失とした人が指示を出すなどというのは、恐ろしくて聞いていられないものです。
指示は、いかなる場合にも沈着冷静、非常に冷静な視点から出てくる必要がある。これが、「先づ挙動言語より厚重にいたし」です。これを、日常的に訓練しなければいけない。気を落ち着かせる訓練をしてくれ、と言っているわけです。そのことが、次の「威厳を養ふ」ということにつながります。
「威厳」とは、何でしょうか。訓練をしていなければ、とんでもないことが起きたときには誰でも慌ててしまいます。日頃から「とんでもないことが起こったときは・・・」と繰り返して自分に言い聞かせ、訓練する以外にはないわけです。それを積んで、初めて「とんでもないこと」の担当になれるわけです。
●威厳は克己。休みたい自分に逆らう習慣を
「威厳を養ふ」の「威厳」とは、自分に対する制御能力であり、別の言葉で言えば「克己」に当たります。私は克己を非常に重視していて、自分の生徒にも「克己を実行してくれ」と繰り返し言っています。非常に重要なことだからです。
克己とはどのように行うものでしょうか。一つの仕事が終わって、「じゃあ、ビールにするか」というときに、「いや、しない。あと10分続けるよ」と言う。「さあ、もうこの辺で切り上げようか」「いや、切り上げないよ。あと1時間やるよ」と、ことごとく自分に逆らうことです。
これを1年間ぐらいは続けてもらいたい。そうすると最初の3カ月で、自分が制御できているという自覚ができます。例えば怒りっぽい人だったとする。「さあ、怒ろう」という、カーッとくるときにも、ほんの一寸の間合いがあるものです。...