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リーダーたるもの「忙しい、忙しい」は恥ずべき禁句

重職心得箇条~管理職は何をなすべきか(10)職責と職権の関係を心得よ

田口佳史
東洋思想研究家
概要・テキスト
東洋思想研究者・田口佳史氏の手引きで読む『重職心得箇条』の第8条と第9条は、特に人の上に立つものの心得の奥義に入っていく。まずは、ついつい誰もが口にしてしまいがちなある言葉について、田口氏が解説する。(全15話中第10話)
時間:11:57
収録日:2016/02/03
追加日:2016/06/06
タグ:
≪全文≫

●「忙しい」と言えば言うほど冷静さを失うことに


 さあ、次が第8条です。

 「重職たるもの、勤め向き繁多と云ふ口上は恥ずべき事なり。仮令(たとえ)世話敷くとも世話敷いと云はぬが能きなり、随分手のすき、心に有餘(ゆうよ)あるに非れば、大事に心付かぬもの也。重職小事を自らし、諸役に任使する事能はざる故に、諸役自然ともたれる所ありて、重職事多きになる勢いあり。」

 これは、皆さんも聞かれたことがあると思う、有名な『重職心得箇条』の文章です。つまり、重職ぐらいになったらどういうことになるかと言えば、「勤め向き繁多」、忙しいんだよ、忙しいんだよ、という口上、そういうことを言うのは恥ずかしいことですよ、ということです。

 「仮令世話敷くとも」、これは、上に行くということは、これはもう当然いろいろな問題を抱え、問題が矢継ぎ早に飛んでくるというのがありようですから、間違いなくせわしいのです。しかし、そのときにその人間の本領が出るのであって、せわしいときも、せわしくないような余裕綽々の涼しい顔でずっといるということが重要だということですね。「世話敷いと云はぬが能きなり」、これは、「本当に忙しくってね、もう弱っちゃうよ、大変なんだよ」と言えば言うほど、そういう雰囲気に自分の心がなってしまう。したがって、沈着冷静さを失うということを、ここで言っているのです。


●心の余裕が大局観を可能にする


 「随分手のすき、心に有餘あるに非れば」、つまり、余裕というものがなければ、「大事に心付かぬもの也」。大きなことやものというのは、それだけ引いて、大きく見ないと見ることができません。当たり前のことなのですが。そういう意味で、手元の小さいことばかりを見ていれば、大きなことを見ることができないのです。

 今、私が皆さんに申し上げているのは国際情勢でありまして、今年に入ってからドンドーンと非常に荒れ模様になってきました。言ってみれば、お隣の中国はこれからどうなるのかということもあるし、アメリカは世界の警察国家と言わんばかりだったあの勢いもない。そうすると、そこにロシアが入って復権を果たそうとする。IS(イスラム国)、またイスラムの中でも宗派対立が起こってくるという、大変なときです。

 特に日本の企業のように海外に全てを付託しているような状況下、これは一旦緩急何かあってもしかるべき...
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